はじめに
こんにちは、DeNAのIT本部AI・データ戦略統括部AI技術開発部ゲームエンタメグループでマネージャーを務めている松井です。
DeNAでは2025年度人工知能学会全国大会(第39回)(JSAI 2025)にプラチナスポンサーとして協賛させていただき、インダストリアルセッションでの発表と、企業展示ブースを出展させていただきました。本ブログではDeNAの各メンバーが登壇したセッション、ポスター発表、企業展示ブースの内容の紹介などをさせていただきます。
人工知能学会とは
人工知能学会 は、1986年に発足した、日本における人工知能研究の中核を担う学術団体です。AIに関する研究の進展、知識の交換、そして技術の普及と発展を目的としています。39回目の全国大会 JSAI 2025は2025年5月27日(火)から5月30日(金)までの4日間、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で開催されました。
参加者は史上最多の4922人(現地、オンライン合わせて)だったそうです。昨今のAI技術への注目度の高さが現れていると感じます。

インダストリアルセッション「DeNAにおけるAI技術の事業適用」

5月28日のインダストリアルセッションにて「
DeNAにおけるAI技術の事業適用
」と題して、DeNAにおけるAIの事業応用戦略と、具体的なAI技術の適用事例を松井(
@kenmatsu4
)が発表しました。
DeNAの事業領域と、「DeNAはAIにオールイン」を掲げる全社的なAI戦略、さらに具体的な事業におけるAI活用事例を紹介しました。その一例として、ゲーム『逆転オセロニア』におけるAI活用を取り上げ、複雑なデッキ構築を支援する機能について説明しました。この機能は、コストやゲーム仕様といった制約条件下で最適な駒の組み合わせを自動生成し、プレイヤーにデッキを提案するという課題に対し、Transformerベースのモデルをどのように応用しているかを解説しました。
人工知能とコンペティション「RecSys Challenge 2024 優勝報告」
企画セッションである「 人工知能とコンペティション 」において、RecSys Challenge 2024 というコンペティションの全体像と優勝に至ったアプローチについて村上( @634kami )が講演しました。
このコンペティションは推薦システム分野で権威のある国際学会「18th ACM Conference on Recommender Systems (RecSys)」における併設コンペティションであり、デンマークのニュースサイト「Ekstra Bladet」から提供された実データを用いたニュース推薦に特化したコンペティションです。
国際学会についての概要や RecSys Challenge の関連ワークショップについて共有した後、具体的なコンペティションのタスク設計と設計上の課題・TransformerやLightGBMを用いた解法の詳細について解説しました。
資料についてはこちらから確認可能です▼
一般セッション 基礎・理論「潜在意図の後推定による多様な方策の生成モデル」
一般セッション [2L5-GS-1] 基礎・理論 にてゲームエンタメグループの甲野が発表を行いました。本研究は強化学習の課題である「深い思考に基づかない探索」「方策の単一性」を補うことを目的とした研究です。前提として強化学習は膨大な試行錯誤で生成された軌跡データで学習するのに、同じく大規模な生成モデルと違って完成品となる方策(行動確率、行動パターン)が多様性を持ちません。そこで強化学習が報酬追従の過程で発生した軌跡データを保存 / 再現可能な生成モデルを従来の強化学習に加えた方策学習アーキテクチャ A-S-C (Actor-Skald-Critic) として考案しました。
A-S-C により探索中に発生した有用な方策の再利用が可能になり、生成モデルなので目的の変化に伴ったプロンプト指定でゼロショットな方策の変更が可能になります。さらに A-S-C を世界モデルと組み合わせた半基盤モデルとして確立することで、新たなタスクに推移した際も暫定的な潜在変数を言語空間変換し、Chain of Thought (CoT) と方策への再変換による仮説検証的な探索の実現を目指しています。仮説検証的というのは「現モデル(仮説)が正しいか知るためには情報が足りないから、必要な情報を自分で試して獲得する」という人間が行うような主体的探索であり、生成モデルの効率的で生涯的な継続学習に寄与しうる技術です。
A-S-C のアーキテクチャそのものの詳細な導出や工夫点などは近日公開予定の論文やスライドを御参照いただければ幸いです。

ポスター発表 「臨床フォームの自動入力における大規模言語モデルの活用」
DeNAの森( @dm_speechAI )が、株式会社アルムと共同で行った研究「 臨床フォームの自動入力における大規模言語モデルの活用 」についてポスター発表を行いました。
本研究は、株式会社アルムが提供する医療関係者間コミュニケーションアプリ「 Join 」での活用を視野に、医療現場における所見メモなどの非構造化データを構造化されたフォームへ転記する際の作業負担や、専門用語が多く自動化が困難であるという課題に取り組んだものです。
発表では、この課題に対する大規模言語モデル(LLM)を用いたアプローチを共有し、擬似的なデータセット上での複数モデルの性能や振る舞いを比較検証した結果について解説しました 。
企業展示ブース
企業展示ブースでは非常に多くの方々にお立ち寄りいただき、AI活用の具体的な事例を交えながらご紹介させていただきました。
ブースでは、AI技術やその事業応用に対する関心の高さを強く感じる場面が多く、以下のようなご質問を数多くいただきました。
- AIの事業応用事例と用いられた技術
- 社内におけるAIの活用例
- Kaggle支援制度の内容と活用状況
など



モニターには実際のスポーツ×AIの事例として「バスケットボールのトラッキングデータ自動作成」に関するデモ動画を上映していました。デモ動画をきっかけに、より詳細な技術ディスカッションに発展する場面も多く、非常に有意義な時間となりました。

おわりに
本記事ではJSAI 2025におけるDeNAの活動として、セッション登壇や企業ブースの様子をお届けしました。現地では多くの方々と交流させていただき、大変有意義な機会となりました。学生の方々にもDeNAの企業ブースにお立ち寄りいただき、DeNAにおけるAI活用の取り組みに加えて、サマーインターンや新卒採用に関するご質問も多く寄せられました。ご来場いただいた皆様、本ブログを読んでくださった皆様に御礼申し上げます。
新卒採用に関する情報は、以下のリンクからご覧いただけます。ご応募お待ちしています!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
この記事をシェアしていただける方はこちらからお願いします。