こんにちは!DeNAで新卒採用/育成を担当している長尾 @ShuNagao です。
今回私ははじめて配属に関わりましたが、配属の1つ1つの意思決定には重みがあり、配属って本当に大変ですよね。。
この記事では、DeNAの配属プロセス並びに配属の決め方の試行錯誤の裏側を赤裸々にお伝えしていきたいと思います!
なぜこのブログを書くのか
各企業の配属プロセスは公開されにくい情報です。
私も担当になった際、実際にネットでも調べましたがなかなか配属プロセス/決め方についての情報はありませんでした。
それ故、配属担当となった場合に参考にできる情報は少なく、部門ニーズと、僅かな選考情報で得た新卒メンバー情報を基に、配属担当が配属を決めることもあるかもしれません。
ただ、配属ミスマッチは新卒メンバー、部門にとって不幸な結果を生み、新卒メンバーの早期離職などにつながりかねません。 まだまだDeNAの配属プロセスも完璧ではありませんが、そんな不幸が1つでも生まれないことを祈って、今回オープンに記載したいと思います!
DeNAの特徴、配属ポリシーと考え方
具体的な配属プロセスに移る前に、DeNAの特徴、配属ポリシーと考え方をお伝えしたいと思います! まず、DeNAの特徴としては以下があげられます。
- 多種多様な事業を展開する事業会社
- 事業の性質・規模・フェーズによって、組織の在り方・技術スタックは異なる
- 事業間の異動が活発
このような特徴があるため、基本的にDeNA の新卒エンジニア採用では採用時にポジションを確約することはしていません。 採用から配属されるまでのリードタイムが(最大 2 年)あるため入社時の4月には部門状況が大きく変わってることもありうるためです。 また、新卒メンバー視点で考えても、採用から配属までのリードタイムの間に積む情報量や経験によって、志向性が変わることもあります。何なら入社後の研修で変わることもあります。 したがって、入社してから配属することになります。 スケジュールも限られており、これが大変です。。!
配属ポリシーと考え方
次に、DeNAの配属ポリシーと考え方です。 配属ポリシーはシンプルで、「最も成長し、価値を発揮し、成果を出せる環境に配属する」です。
その上で、「最も成長し、価値を発揮し、成果を出せる環境」には本人にとってチャレンジングで挑戦的なミッションがあると考えます。 ただ、この「挑戦的なミッション」は配属直後は与えられることもあるかもしれませんが、いつまでも与えられるものではなく、むしろ自律的に探すあるいは、つくることが連続的にできる環境であると思います。 この自律的というのがポイントで、仕事は与えられるものではなく、獲得し成果を上げることが必要です。
ただ、そのための道が用意されていない場合も多いと思います。 自分にとって未知なことも、想定していないこともたくさんあります。 むしろ、そんなことだらけかもしれません。 その度に自身を適応、変化させていく必要も出てきます。
自身を適応させて、乗り越えるべき課題は以下3点の掛け算によって発生すると考えています。 本人特性、職場特性、メンター特性です。
自身の性質、価値観にフィットした (本人特性) Will、Canに沿った難易度の高い業務に挑戦でき (職場特性) 相性抜群のメンターのメンタリング (メンター特性) がある環境だと、言うことなしですよね。
ただ、何かがずれる場合は、乗り越えるべき課題がでてきます。
そしてそれらの課題について、そもそも「乗り越えたい!と思えること」が必要で、そう思えるためには3つの条件があります。
正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will)の3点です。 1点目の正当性(must)とは、その仕事(ときには理不尽だったり、地味だったりする仕事)に取り組むことが、自分の中で正当化(納得)できる・できるか、ということです。
2点目の自己完結性 (can)は、「自分が関わることで課題を解決できるか」です。 解決への自己完結性が低すぎると、個人ではどうしようもない課題に直面し続けて、無能感を感じ、強いストレスを感じます。
3点目の展望への影響(will)はシンプルで自身のキャリアに繋がってる実感が持てるか、です。
すなわち、DeNAの配属プロセスはこの正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will)の3点を新卒メンバー・部門が明確化しながら、マッチングしていくプロセスともいえます。 後述する配属プロセスは、この考え方が土台となってる前提で読んでもらえたらと思います。 また、より詳細については、以下記事にも記載してますので、ご確認ください!
参照:配属アンマッチを最大限なくすために 参照:【配属編】願いドリブンで新卒の成長環境を考え続けている話
2023年の配属における前提条件
例年、新卒エンジニアの配属対象は30名前後でしたが、新卒エンジニアの採用強化を進めたことから2023年においては開発経験をもつエンジニアが 64名と例年比で約2倍 の状況でした。
また、受入候補部門における事業・職種が多種多様なJobDescription(職務記述書)は*39ポジションあり、組み合わせのパターンは莫大となります。 ※複数人数受入希望があるポジションもあります
ただ、HRの工数は2倍かけれる状況ではありませんでした。 より 配属マッチングの精度向上を図りつつ、プロセスの効率化/仕組み化を狙う 必要がありました。
挑戦したこと
上記前提がある中で、最後の配属の判断はしっかりHRで担う前提で、新卒メンバー・部門のマッチングプラットフォームをつくることに注力しました。
そもそもマッチングプラットフォームとは何でしょう。 ChatGPT に聞いてみると、以下のような回答をしてくれました。 「マッチングプラットフォームとは、特定のニーズを持つ個人や組織を、それを満たすことができる他の個人や組織とつなげるための仕組みのことを指します。これは、省力化、効率化、透明性の提供などの利点をもたらします。」
まさに、配属においては、新卒メンバー・配属部門双方のニーズを透明性高く、情報の非対称性をうまずに、より効率的にマッチングする仕組みです。
主に配属はHRが担うことが多いと思いますが、HRに情報が集約されてしまい、新卒メンバー・配属部門双方で情報の非対称性がうまれることは避けなければいけません。
HRに情報が集約されると、HRも大変だし、新卒メンバーや部門も情報が足りずに配属に納得感がなく、誰も幸せではありません。
そのため、新卒メンバー・配属部門双方のニーズを透明性高く、情報の非対称性をうまずに、より効率的にマッチングする仕組みをマッチングプラットフォームと定義し、この仕組みをつくることに注力しました。
マッチングプラットフォームの全体像
大きな流れは以下となります。
マッチングプラットフォーム設計におけるポイントは
①収集・提供する情報
②マッチングプロセス
だと捉え、それらのポイントをより具体的に説明します。
収集・提供する情報
まず、そもそも新卒メンバー・部門から何の情報を収集し、提供するか、です。 ここでのベースとなる考えは、先述した正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will)の3点を新卒・部門が明確化できる情報となります。
Job Description
部門にはJob Descriptionを用意してもらいました。 部門からの情報はJob Descriptionがベースになります。
新卒メンバーがJob Descriptionを読んだ上で、正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will)を考えうることを狙いとして以下要素を記載してもらいます。
- 組織のMISSION・VISION
- 職務要約
- 職務定義
- ポジション
- 職務
- 開発環境・ツール
- 期待役割・裁量
- チームの特徴・雰囲気
- チームの教育制度やキャリアパス
- 成長イメージ
事前にHRでJob Descriptionも確認し、情報の不足がある場合は追記をしてもらいました。
部門説明会
Job Description(職務定義書)では伝えきれない部門の雰囲気やより詳細情報、新卒メンバーからの質疑応答の場として部門説明会を任意で開催しました。
開催した説明会は必ず録画してもらい、部門説明会への参加可否によって情報の非対称性が発生しないよう、録画をJob Descriptionに添付してもらうようにしました。
次に新卒メンバーから収集し、部門へ提供する情報となります。
キャリアの志向性アンケート
Job Descriptionや部門説明会で得た情報を基に、正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will) についてアンケートに答えてもらいます。
希望する部門をヒアリングするのではなく、正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will)について内省することを目的としてアンケートを設計しました。
正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will)について考えることは簡単ではないですし、また、入社前、入社前後、研修中で変わることも少なくありません。
実際に収集した情報は以下となります。
【正当性】
設問のアクションについて配属先で求められたときに「やる価値がある」と感じるか、を答えてもらいます。 キャプチャは一部抜粋をした実際の設問例です。 ここでは、実際配属後で求められるわけではないような設問も多いですが、 内省のきっかけとして、極端な例を記載をしています。
【自己完結性】
各Job Descriptionを読み込んだ上で、「自分にやれるかも」と感じた程度を回答してもらいました。 また、特に自己完結性を感じたJob Description、感じられなかったJob Descriptionそれぞれについて理由を具体的に回答してもらいました。
【展望への影響】
各Job Descriptionを読み込んだ上で、自分のキャリアや人生の展望につながると感じたJob Description3つとどうしてそのように感じたかを回答してもらいました。 また、このタイミングで、内省に苦心した新卒メンバーについては、個別で面談なども実施し、内省のサポートも行いました。
面談希望アンケート
キャリアの志向性アンケートにて新卒メンバーが内省するプロセスを経て、新卒メンバーの面談希望を収集しました。 このタイミングで、一部の部門に面談希望が偏り、どうしても部門側で面談対応が難しいことも発生しました。 この事象については、キャリアの志向性アンケートをベースにし、部門側にて絞り込みました。 また、この状況・プロセスを新卒メンバー個々人にも伝え、極力オープンにした状態で進めることを意識しました。
面談
上記のプロセスを経て、新卒メンバー・部門にて面談を実施します。 ここが、新卒メンバー・部門双方で最も情報を取得・提供できる機会となります。
面談目的としては、新卒メンバー・部門それぞれが考える発生しうる適応課題をすり合わせることです
面談前には、限られた時間で適応課題を明確にしすり合わせるために、新卒メンバーには事前に以下アンケートに回答してもらいました。
- 主にチームカルチャーに対してフィットするところ、適応が必要なところ
- チームへ適応するために、能力的にどんな壁がありそうか
- 適応課題を乗り越え、どんな活躍を1年後にしていてもらいたいか
- それをすることが、本人のwillにどうつながるかも記載してください。
- 適応を補佐するメンバーは誰が適切か、その理由
面談後には、部門・新卒メンバーそれぞれから、以下情報を収集します。
部門から
- 主にチームカルチャーに対してフィットするところ、適応が必要なところ
- チームへ適応するために、能力的にどんな壁がありそうか
- 適応課題を乗り越え、どんな活躍を1年後にしていてもらいたいか。
- それをすることが、本人のwillにどうつながるかも記載してください。
- 適応を補佐するメンバーは誰が適切か、その理由
- マッチングについて
- ◎(will,can,mustが重なりベストマッチング)or ◯(配属OK) or ✕(アンマッチ)
- 上記の理由
新卒メンバーから
- 面談前と認識が変わった(ポジもネガも)点について具体的に教えてください
マッチングロジック
さて、ここまで情報が集まれば、いよいよ配属判断を進めていきます!
面談後の、新卒メンバー・部門それぞれからの情報を基に、正当性(must)、自己完結性(can)、キャリアへの展望(Will)、が重なってるであろう組み合わせから、叩きを作成していきます。
面談後アンケートのみではマッチング判断が難しかったり、双方の認識が異なる場合などは、再度面談を組むなどの対応を行っていきました。 また、配属ポリシーである「最も成長し、価値を発揮し、成果を出せる環境に配属する」から考えると、既に存在するJob Descriptionではマッチングしないこともあります。
その場合は、配属ポジションを開拓していくコミュニケーションを部門とも行いました。 また、このプロセスを進めながら、全社観点での人材ニーズの充足度も考慮・把握しながら進めていきました。
と、文章で書くと簡単ですが、一部の新卒メンバー/部門の組み合わせが変わると、全体の組み合わせにも影響があります。 そのため、配属ポリシーの軸はしっかりもちつつ、粘り強く検討を進めていく必要がありました。
発生しうる副作用とその対策
さて、ここまでが配属判断までのプロセスになります。 実際に、「マッチングプラットフォーム」のテーマを掲げて進めた上で、 発生しうる副作用と対策についてもまとめていきたいと思います。
①新卒メンバー・部門から提供された情報がそもそも正しいか
副作用としては、提供された情報を完全に正として鵜呑みにしてしまい、精度の低いマッチング判断をしてしまうことです。 マッチングを図る上で、新卒メンバー・部門それぞれから提供された情報が正しい必要があります。 特に新卒メンバー自身が、正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will)の内省/深ぼりできてるか、がポイントでした。 配属候補の部門も新卒メンバーのファーストキャリアを預かるわけで、本気で面談で向き合いますが、そもそも新卒メンバー自身の正当性(must)、自己完結性(can)、展望への影響(will)が曖昧であれば、部門も判断が難しいということがありました。
入社前にも内省のサポートなどは行いますが、研修中に変化することもあり、 HRが新卒メンバーと面談を進めながら、深掘りする役割を担いました。 ここはHRがしっかり時間をかけました。
②配属ポリシーに熱量高く向き合うこと
正しい情報が提供された上で、次に副作用としては既に存在する選択肢における最適解の判断をしてしまうことです。
マッチングプラットフォームとして、機会的に仕組み化していく側面もあるからこそ、HRが熱量高く、「最も成長し、価値を発揮し、成果を出せる環境に配属する」のポリシーをずらさずに、配属検討を進める必要があります。 具体的には、新卒メンバーと部門間で認識のずれがある場合が、ずれを解消するコミュニケーションを図ったり、あるいは配属ポジションを開拓していくコミュニケーションを部門とも行いました。 こここそが、このプロセスにおいて、HRが最も担うべき役割だと感じました。
最後に
以上、今回は配属に焦点をあてて、配属プロセスを公開しました!
もちろん配属して終わりではなく、むしろ配属してからが本番です。 配属後の育成については、ご興味ある方はぜひ以下記事をご覧ください。
参照:DeNAメンター育成制度に革命を。“永遠のベータ版”としてプログラム化、日本最強を目指す
配属の考え方やプロセス面においても、まだまだ改善・ブラッシュアップの余地は大いにありますので、 常に磨いていきたいと思います
新卒研修内容などは公開される動きもありますが、配属プロセス/決め方においてはまだまだ公開されていないことが多いように思います。
配属ミスマッチは新卒メンバー、部門にとって不幸な結果を生むため、業界全体で磨き上げていけるといいなと願っています! 我々も引き続き頑張ります!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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