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2023.05.17 イベントレポート

DeNAのWeb3開発グループメンバーがETHGlobal TokyoでPrizeを取りました!

by Ibuki Nakajima

#Blockchain #Ethereum #L2 #ZKP #Crypto #web3 #ETHGlobal

こんにちは。デジタルエンターテインメント事業部のWeb3開発グループに所属しているnakaj1maです。2023年4月14日から4月16日にかけて開催されたETHGlobal Tokyoに、私たちWeb3開発グループのメンバーが参加しました。この記事では、ETHGlobal Tokyoへの参加理由や作成したプロジェクトについて紹介します。また、ETHGlobal TokyoでのDeNAエンジニアの活躍やハッカソン会場の雰囲気もお伝えできればと思います。

ETHGlobal Tokyoの紹介

ETHGlobal Tokyoは国際的なハッカソンで、主にブロックチェーン、特にEthereumエコシステムに関わる開発者が参加します。今回の参加者は総勢1500人以上で、そのうち約1000人がエンジニアでした。さらに、59カ国からの参加者がいて、会場では基本的に英語で会話が交わされるなど、グローバルな雰囲気が漂っていました。

ETH Globalが主催するハッカソンでは、主催者が選ぶファイナリスト枠と、パートナープロジェクト賞が用意されています。今回は38のパートナープロジェクトが協賛しました。

東京で開催されるETHGlobal主催のハッカソンは今回が初めてであり、新型コロナウイルスの影響で日本に来られなかった海外の方々も、この機会に訪日することが予想されました。そのため、ハッカソン開催期間中に多くのサイドイベントが開催され、ハッカソンに参加しない人たちもブロックチェーン業界のデベロッパーコミュニティの盛り上がりを体感できる充実したイベント期間となりました。

参加メンバー

陶山拓也

2019年にDeNAへ新卒入社。小説投稿サービスのアナリスト/プロダクトマネージャーを経験後、2021年から新卒ビジネス職の採用オーナーを担当。2023年1月よりエンターテインメント開発事業本部にてブロックチェーン技術を活用した新規事業を推進中。

夏目 亮太

1996年生まれ。早稲田大学大学院にて修士号を取得後、2020年4月にDeNAに新卒入社。AIを活用した新規プロダクトの立ち上げ、PocochaへのAI応用、web3領域の新規プロダクト立ち上げに従事。 2022年5月に株式会社ProofXを創業し、NFTを活用した企業ブランドの顧客ロイヤルティ向上・ファンづくりに取り組む。NFT発行・スタンプラリーサービス「ProofX」やNFTを活用したロイヤルティプログラムを展開。

長田 乾(ten3)

2022年にDeNAに中途入社した自称「緑色の毛を持つ生き物」。Web3って何?な状態からPickfiveとPlayback9の開発に参加。Web3のエンタメ活用を中心にアイデア出しから開発まで意欲的に取り込むオールドルーキー。DeNA入社前は国内SNSの開発やソーシャルゲーム開発等を行なっていた。

中島 伊吹(nakaj1ma)

1年のインターンを経て、2022年にDeNAへ新卒入社。インターン時代には主にヘルスケア事業部での新規プロダクト、その後ライブストリーミングサービス IRIAMでのサーバ、インフラ開発に従事。クラウド技術領域の専門性を活かし、負荷試験やプロダクト成長フェーズでのSRE業務などに注力。現在はブロックチェーン事業の新規事業を推進。特にzkpやL2といったインフラや暗号学が最近の興味領域。

結果発表!

以下の賞を受賞することができました。全体で311のプロジェクトが提出された中、これらの賞を受賞できたことに感謝しています。

  • Intmax — Best Use 2nd Prize
  • Scroll — Just Deploy(Pool Prize)

IntmaxとScrollはともにETHGlobal Tokyoのパートナープロジェクトで、近年のEthereumのスケーラビリティ問題に取り組んでいるL2プロジェクトのパイオニアです。Intmaxはステートレスな仕組みを持ち、既存のzkRollupよりも高いスケーラビリティと、カスタマイズ可能なプライバシーを実現します。また、ScrollはEthereum上のzkEVMベースのzkRollupで、既存のEthereumアプリケーションやツールとのネイティブな互換性を実現しています。

チーム全員がETHGlobal主催のハッカソンへの参加が初めてであり、さらに審査員へのプレゼンテーションやコミュニケーションが大半が英語で行われる状況だったため、難易度は高かったです。しかし、その分賞を受賞できたことは非常に嬉しく、今後も引き続きハッカソンでのブロックチェーン開発に取り組んでいきたいと思いました。

なぜ今回参加したのか

web3スタートアップ業界では、MVP(Minimum Viable Product)の開発や既存プロダクトの新機能をハッカソン期間中に集中して開発する文化があります。ハッカソンをマイルストーンとして利用することで、モチベーションを維持し、審査員からフィードバックを受けることができ、上手くいけば賞も獲得できます。

この文化を大企業に取り入れるのは難しいですが、私たちはその働き方に挑戦してみる目的で参加しました。チーム内でモチベーションを高める意味もありますが、特に著名な審査員から評価を受けることは、日本の大手企業にいるとCrypto nativeな感覚でフィードバックを受ける機会が少ないため、貴重な経験です。

また、会場で参加者と交流することで、グローバルレベルでデベロッパーコミュニティが盛り上がっている様子を体感できます。これは、プロダクト開発において、どのようなユーザーがプロダクトを使うのかや、そのシーンを想像する上で非常に重要です。

これらの理由から、私たちWeb3開発グループは、検討していた新規事業アイデアをETHGlobal Tokyoで発表することにしました。ハッカソンのルールにより、開発はハッカソン期間内に行わなければなりませんが、幸いにも開発はまだ始まっておらず、アイデアの具体化は完了していました。ハッカソン参加を決定した後は、使用する技術スタックの調査などを行いました。

実際にハッカソンに参加して感じたメリット

実際にハッカソンに参加して感じたメリットに一つは、チームの一体感が増すことでした。Web3開発グループには新メンバーが続々とジョインしており、参加したチームメンバーの中にも最近加わった方もいましたが、ハッカソンを通じてとても親睦を深められたと思います。

今回は、開発に集中するために宿泊施設を確保し、そこで3日間開発を行いました。応援に来たWeb3開発グループのメンバーもおり、ハッカソンに参加したメンバーだけでなく、他のメンバーとも親睦を深めることができました。さらに、サイドイベントが開催されていたため、他のチームの参加者ともコネクションを築くことができました。Web3開発グループのメンバーほぼ全員で参加し、社内外でつながりを深めることができました。

また、今回私たちが開発したプロダクトのビジョンに共感して頂いたIntmaxのチームの方ともリレーションを深めることができました。長期的にweb3やCrypto領域に関わっていく上で、インフラレイヤーや技術力のあるプロジェクトとのリレーションは非常に重要だと考えています。ハッカソンに参加することで、これらの価値あるつながりを築くことができました。

作ったプロダクトについて

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概要

今回私たちが開発した「Atomicflow」はCrypto業界のマネタイズ方法における課題を解決するプロダクトです。以下のリンクから実際に提出したPitch映像やLive demoなどを見ることができます。

https://ethglobal.com/showcase/atomicflow-s9nwc

背景

Crypto業界の代表的な事業のカテゴリとしてDeFi(分散型金融)とNFT事業があります。DeFiでは取引量に応じた手数料モデルが主流であり、NFTに関しては二次流通時のロイヤリティフィーなどはありますが、一次流通時の買い切りモデルが主流となっています。また、近年ではDAOなどにおいて組織が使用するガバナンスツールであったり、トレーダー向けの解析ツールといったようにツール群の開発も盛んに行われています。

ソリューション

Web2.0でのツールのマネタイズはサブスクリプションモデルが一般的ですが、web3におけるサブスクリプションを手軽に組み込むことができるSaaSはまだ多くありません。また、Web2.0とは違い、web3ではSmart Contractに対してContract Addressがわかっている場合、基本誰でもアクセスすることができるため、ツール提供者はSmart Contractで適切な認可処理が必要となります。このような処理を独自で書くにはそれなりの工数を必要としますが、ツール提供者はプロダクトの機能に集中すべきです。しかし同時に、マネタイズを考えることはCrypto業界がマスアダプションに向けて継続的に進歩していくためには重要です。そこに目をつけ、私たちはContractレベルでインテグレーションできるサブスクリプションプロトコルを作りました。このソリューションにより、ツール提供者はプロダクトの機能に集中しながら、マネタイズを考えることができます。

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また、Intmaxを利用することで大量のトランザクションを安価に処理することが可能になります。コンセプトレベルではありますが、マイクロサブスクリプションという概念を提案し、分単位で課金されるようなモデルを考えました。これにより、例えば、流行りのAIを60分ほど壁打ちで使うとします、もし30分で結論が出た場合はその時点で課金をやめることができますし、60分を超える場合は分単位で延長するようなことも可能になります。このような柔軟なサブスクリプションモデルは、新たなマネタイズ方法として期待されます。

設計

サブスクリプションのプラン内容や契約者の内容に関してはScroll上のContractに保存します。ユーザーはEOAを使用してContractにアクセスし、プランの変更やサブスクリプション状況の確認を行うことができます。また、Intmaxでの送金をする場合はzkpのproofを作成する必要があり、Atomicflowではそのproof作成のリソースを提供します。それを行うNodeをOperatorと呼ぶこととします。送金先やプランの内容に関してはScrollのContract上に保存してあるため、OperatorはContractから取得した情報をもとに送金すべきPaymentのリストを計算し、Intmax上で送金します。工夫した点は、Intmax上での送金に対して、比較的Contractの操作はガス代を必要とするため、送金が失敗した場合のみContract上の状態を更新するようにしています。また、NFTを用いてアクセスするユーザーを識別するため、NFTを使わない設計に比べて、ツール利用者のUXを向上させることができています。

今後の展開

今回のフィードバックや、実際に使ってもらえそうなCrypto事業者からのヒアリングなどをもとにコンセプト段階のAtomicflowをブラッシュアップを行い、リリースできる状態を目指します。

おわりに

今回のETHGlobal Tokyoでの経験は、私たちチームにとって貴重なものとなりました。世界中から集まったデベロッパーたちとの交流や、新たな技術の学び、そして賞を受賞することができたことは、今後の開発活動に大きな自信となりました。さらに、今後のETHGlobal主催のハッカソンに出る計画もすでに社内で進められています。継続的にこのような取り組みをしていくことで、日本の大企業でweb3やCryptoに携わっているデベロッパーの方々のモデルケースになれると幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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