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2022.10.17 研修レポート

配属アンマッチを最大限なくすために

by Ryo Murakami

#new-grad #career #training

新卒にとって、希望する会社に入れたとしても、「合わない部署に入ったらどうしよう」という恐れが多くの場合あります。この記事では、DeNA の配属担当が「配属アンマッチ」をどのようにして最大限減らそうとしたかを紹介したいと思います。

挨拶

みなさんこんにちは。 DeNA の人事でエンジニア採用をするグループに所属しているの村上( @ryo_mura_brains )と申します。 サーバーサイドエンジニアとして 2 年ほどヘルスケア事業に関わり、その後、組織開発や人材育成に興味を持ち、現在は主にエンジニアの採用や育成周りをやっております。 そして筆者は 2022 年度にて、初めて新卒配属に関わりました。

今回は、世の中の多くの新卒社員が恐れているとされる配属アンマッチ問題と、それに対して DeNA がどのように向き合ったかをお話できればと思います。 DeNA で新卒入社を考えている方や、配属プロセスにご興味ある人事の方は、ぜひご参考ください。

配属を考えるうえでの前提条件について

DeNA では「ソフトウェアエンジニア」という枠を設けて採用をしており、「フロントエンドエンジニア」や「バックエンドエンジニア」という技術領域を絞った採用はしておりません。くわえて、所属する部署も基本的に確約せずに採用をしており、新卒は入社後、研修を受けてから各部署に配属をされている状況です。

より詳細な配属に対する考え方を知りたい方は、以下の記事を御覧ください。

参照:【配属編】願いドリブンで新卒の成長環境を考え続けている話

配属アンマッチとは

配属アンマッチとは、「新卒が希望する会社に入ったとしても、会社事情により、新卒がマッチしない部署に配属されてしまう問題」とここでは定義します。

候補者の方と話すとき、「配属のプロセスはどのようになっていますか?」という質問を受けることは多くあります。その背景をお伺いすると、配属アンマッチによって、興味のない事業に関わることになったり、活躍が難しくなったり、想像していたキャリア形成とずれることなどを懸念している声が多いです。

補足 そもそもなぜ配属確約しないのか

「配属アンマッチをなくしたいなら、採用時点で希望部署を聞いて、そこに配属を確約すればいいじゃないか」という考え方もたしかにありますが、DeNA は現状、新卒エンジニアを採用する際、配属確約をしておりません。 その理由としては、配属されるまでのリードタイムが ( 最大 2 年 )あることが大きいです。

そのリードタイムの間に、DeNA 内で新しい事業が開拓される、あるいはクローズされることもあります。また、入社する新卒社員には、フルタイムの就業経験が少ない中で、曖昧な情報を元に自らが得意なことを仮説立てて行動している人も一定います。そうなると、リードタイムの間に持っている情報が増えるに伴い、志向性が変わります。

これら理由から、配属確約をしない新卒採用をしております。

配属アンマッチの何が問題なのか

ではそもそも、配属アンマッチの何が問題なのでしょうか? 新卒の社員にとっては「パフォーマンス面やメンタル面において、ネガティブな影響を受けてしまうこと」が問題と考えられます。 企業にとっては、「チーム内の不和や、離職につながること」が問題と考えられるでしょう。

2022 年現在、エンジニア一人あたりの採用費は上昇傾向であり、多くの会社や採用担当が必死に候補者を集めていると思われます。 そのような状況で、せっかく採用したエンジニアが配属アンマッチによって思うように活躍できなかったり、ネガティブ理由で離職してしまうのは、双方にとって辛いことです。

また、多くの場合、新卒社員は他社に行く選択肢も持ちながら、ファーストキャリアとしてその会社をあえて選んでおり、そこには様々な期待が含まれます。 その期待に応えるための入り口が、配属というプロセスなのではないかと、筆者個人としては考えております。そういった意味でも、配属アンマッチを防ぐのは重要です。

配属アンマッチはなぜ起きるのか

しかしこの配属アンマッチ、誰もが願ってないにもかかわらず、起きてしまうことがあります。なぜでしょうか?

私が考えるにその理由は大きく分けて 2 つあると考えています。

1 つ目の理由は「大人数の配属調整は、想定できる組み合わせの候補の数が膨大だから」です。

身も蓋もない話にはなりますが、 仮に 30 人の新卒社員を、30 個のポジションに 1 人ずつアサインするだけでも、30 の階乗の組み合わせがありえます。 この天文学的な組み合わせの数のなかから、最適な配属を決めるというのは至難の業です。

2 つ目の理由は、「情報の非対称性」です。

仮に完璧な配属を目指す場合、配属担当は様々な情報を得る必要があります。たとえば、 「新卒社員と、配属候補チームの相性」や「部署の状態の時系列変化」などの情報を得る必要があります。

そしてこれらには、部署/個人にとってセンシティブな情報や、そもそも言語化されてないが故、配属担当に伝わらない情報もあります。 その結果、部署/新卒/配属担当の間に、情報の非対称性が生まれます。

ここにさらに、「自分の一存で、新卒のキャリアを左右してしまうかもしれない」、「部署の今後を左右してしまうかもしれない」という心労が配属担当にはのしかかります。

想定される組み合わせも多く、情報が不完全な中、精度の高いマッチングを実現するためには、配属担当者たちには以下が求められます。

  • 新卒社員一人ひとりの特性や Will に対する解像度を高めること
  • 各ポジションの特性や Will に対する解像度を高めること
  • 新卒と各ポジションの特性や Will における重なりを見つけること

一人ひとりを理解しつつ、各ポジションを把握するだけでも簡単なことではありません。両者の Will や特性の重なりを見つけるのは、更に難しいです。

その結果、どうしても最適解を見つけにくい状況のまま配属が行われてしまい、配属アンマッチが起きるのだと推察しております。

配属アンマッチ問題をふまえた、DeNA の配属スタンス

配属アンマッチ問題をふまえ、配属をするうえで、シンプルな 1 つのスタンスを掲げました。

  • 新卒社員がもっとも成長できて、もっとも価値が発揮できる部署に配属する

そしてこのスタンスに基づき、新卒/部署/人事の三者がその配属に納得できるよう、情報の非対称性を減らすために、最大限情報をやり取りすることを心がけました。

概略図

また、原則としては上記のスタンスを掲げつつも、前節の「配属アンマッチが起きてしまう理由」をふまえ、一定のアンマッチが起きてしまうのは仕方ないと考え、仮にアンマッチが起きてしまった場合でも迅速に対処できるように、各新卒社員のコンディションを Watch する体制を敷くことに決めました。

配属アンマッチを減らすためにやったこと(時系列)

配属な大まかな流れは、以下となります。

  • 配属チームの組成
  • 入社前後での配属プロセス説明と、自己/会社理解
  • 各部署のキャパシティ確認
  • 双方が納得した状態を作る
  • 配属を決定する
  • 活躍を Watch する

ここから、それぞれの段階で、具体的にどのようなことをやったかを時系列で書いていきます。

配属チームの組成

まずは、配属チームを組成しました。主に新卒部の人間を中心に据えつつ、エンジニアリング室(全社横断で、エンジニアの支援をする部署)のメンバーからもサポートを受けることにしました。エンジニアリング室のメンバーには、入社から配属までの 3 ヶ月の間に、新卒との 1on1 を通した、キャリア相談やメンタル支援をしてもらいまいした。

また、配属するうえでのスタンスと具体的な方法に関して新卒部内で共通認識をつくったり、配属を予定する部署と、配属のステークホルダーとなる人物の確認をしたりもしました。

入社前後での配属プロセス説明と、自己/会社理解

より良い配属とするためには、新卒社員には自身のことを理解し、配属担当に伝えてもらうことが重要です。 そこでまず、新卒社員には、自分自身のパーソナリティや会社に対する理解を深めてもらうことが大事と考え、以下 2 点を行いました。

第一に、入社前に、入社予定者に配属におけるスタンスやポリシーを説明しつつ、入社予定者に個別でパーソナリティや経験のヒアリングをしました。 そのヒアリングでは、各入社予定者が、過去に、どんな「こと」に、どんな「人」と、どんな「環境」で取り組んだとき充実度やパフォーマンスが高かったかを聞くことで、よりその人がどの部署に合いそうかを考える一助としました。

第二に、研修を通して、新卒に自己理解、会社理解を深めてもらいました。研修の一環で、個々人の過去にディープダイブし、自身の在りたい姿を考えてもらいつつ、どんな部署がどんな事業を行っているかを知ってもらいました。

これらにより、個人と事業部の方向性に重なりがありそうかを、新卒社員自身に探ってもらいます。

各部署のキャパシティ確認

配属するうえでは、そもそも部署に新卒を受け入れるキャパシティがあることが前提です。そして現在、DeNA では、原則 1 名のメンターが 1 名の新卒を担当するようにしておりますので、その部署の受け入れられる新卒の上限数は、その部署でメンターができる人数に基本的になります。その上限数を知るために以下を行いました。

まずは、メンター選定要件を作りました。メンターをやるひとは、『新卒の可能性を信じれる人であるべき』などの種々の条件を設け、逆に現時点でメンターをやるべきでない人をドキュメントで言語化しました。

次に、メンター選定要件をもとに、メンターの候補者をリストアップするよう、各部署のマネージャー陣に依頼しました。

そしてリストアップされたメンター候補者全員に、コミュニケーションスタイルに関するアンケートに回答してもらいつつ、配属チームが面談をし、メンターとしての要件を満たしているか、そしてそもそもメンター業務をやりたい思いがあるかの確認をしました。

双方が納得した状態を作る

部署と新卒の双方が、相互の情報を得て納得した状態を作るために、より多くの情報提供を部署と新卒社員にしてもらいました。

具体的には、部署には各ポジションの JobDescription(JD) を書いてもらいました。

JD には、以下の項目を記載してもらってます。

  • 職務
  • 開発ツール
  • 期待役割
  • チームの特徴や雰囲気
  • 1 年後にどんな活躍をしていることを期待するか

この JD を元にしつつ、口頭で各部署/ポジションの説明会を研修中に開催しました。 ここで、各新卒エンジニアは、どの部署がどんな言語やツールを使いながら、どんなスタイルでシステムを開発しているかを部署のメンバーから直接知ります。ここで話された内容を元に、各部署への興味度も回答してもらいます。

一方で新卒社員には、パーソナリティ、コミュニケーションスタイル、部署希望度に関するアンケートを回答してもらい、これを元にそれぞれの Will や「在りたい姿」を深堀ります。

こうすることで、部署と新卒に関する情報がおおよそ揃います。あとは揃った情報を組み合わせながら、相性の良さそうな部署と新卒の面談を調整します。場合によっては各新卒が複数の部署と面談をします。この面談を通して、双方の感触が良いかを確認します。

配属を決定する

面談を通して、部署と新卒の双方の感触がよいことを確認できたら、いよいよ配属を決定し、部署と本人に通達する段階です。

この段階では、各新卒に配属に対して納得感を持ってもらうために、なぜこの部署に配属するのかを伝えます。

より具体的には、新卒のどのような特性や Will と各部署のどんな特徴をふまえて配属するのか、そしてどのような期待をしているのかを伝えます。

それとあわせて新卒社員には、その人の可能性はその配属部署に閉じているわけでは全くなく、むしろ広がっていることを感じてもらうために、以下も伝えます。

  • 配属される部署はあくまで最初の数年間で所属する部署であり、その部署が唯一の適性な部署というわけではないこと
  • 入社 1 年後以降は、シェイクハンズ制度を利用して、異動が可能なこと
  • 仮にアンマッチが発生した場合、すぐに相談してほしいことや、場合によっては異動調整すること

活躍を Watch する

配属はあくまで、活躍の入り口でしか有りません。したがって、それぞれが配属後に活躍できているかを Watch していきます。

Watch する方法の 1 つがサーベイを利用することです。 そのサーベイでは、弊社が利用しているいくつかの育成理論(組織社会化理論や、オーセンティックリーダーシップ理論など)に基づいた質問をしています。 より具体的には、以下のようなことをサーベイで聞いております。

  • 『あなたは、周囲から自分の強みを理解してもらえていると感じられていますか?』
  • 『あなたはチームの中で、どんな役割を期待されているか明確な状態ですか?』
  • 『現在取り組んでいる仕事が、ご自身の人生にとって意味/価値があると思えている状態ですか?』

これらを通して新卒のコンディションに異常がないかを月次でチェックしています。 サーベイのなかで、人事と面談を希望するかも聞いており、希望者には、業務や人間関係上の不安を適宜ヒアリングします。

Watch する方法がもう 1 つあり、それは毎月のメンターコミュニティの運営をすることです。 メンターコミュニティというのは、各新卒のメンター同士が班となって、新卒の育成に関して相談しあう場です。 この場は、メンター自身がメンターとしてのあり方を振り返るための場ではありますが、これを通して間接的に新卒の様子を知る機会にもなっております。

このようにして配属後の活躍を Watch しております。

学びと展望

以上が、22 卒の配属のプロセスとなります。

冒頭でも述べたとおり、筆者にとっては、今回が初めて関わる配属となりましたが、採用、配属、育成に関わりながら学んだのは、月並みですが、「最適配置」の重要性です。

「ある部署では思うようにいかなかったが、別部署に異動した結果、大活躍するようになった」という事例を結構な頻度で聞きます。

立場上、大きなもがきや苦しみを抱える社員の話を聞くこともそれなりにあるのですが、そのようなケースで「ポジションの提案」「配置転換」という対応の引き出しを持てることは、大きな意味があると感じております。

そしてその武器を磨くためにには、以下の 3 つが大事と考えます。

  • 関わる社員のパーソナリティ理解に最大限努め、その人の特性や Will の解像度を高めること
  • 各部署の状況を現場視点、経営視点でみつつ、その特性や Will の解像度を高めること
  • 社員達を信じ、自信を持って配属理由を伝えること

来年度は、より多くの新卒エンジニアを迎え入れる予定です。

今年度のようなプロセスが 23 卒の配属でもできるかは現時点では不明です。ツールの利用などによるプロセス効率化なども考えられるでしょう。

ただ、どのようなプロセスになるにしても、『新卒社員がもっとも成長できて、もっとも価値が発揮できる部署に配属する』ことは、最大限ぶらさず、取り組めたらなと思います。

そして最後にですが、もしこの配属というプロセスに関心がある方がいたら、ぜひお声掛けください!DeNA が新卒エンジニアを積極採用しているため、それに伴い配属の重要性も非常に増しております!一緒に新卒の未来の一歩目を作りましょう!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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