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2022.08.30 カルチャー・環境

ネットワークエンジニアへのみちのり[DeNA インフラ SRE]

by Tadayoshi MIURA

#network #infrastructure #technical-verification #branding #onboarding #infra-quality

こんにちは、IT基盤部ネットワークグループ / NOC (Network Operation Center)の三浦(t_miura)です。

DeNAには2016年新卒としてjoin、研修期間等の後IT戦略部にて6年弱社内情報システムエンジニア(社内情シス)として従事し、 2022年3月に開始した兼務を経て2022年6月にIT基盤部NOCへ完全移籍して、NOCでの業務を開始してもうすぐ半年が経とうとしています。

今回の記事では、情シスエンジニアからネットワークエンジニアとなるまでの道のりと、何故私が「深く広く」をモットーとしているのかを紹介します。

エンジニアとしての遍歴

コンピュータを触り始めたのは幼稚園に入る前(当時の愛機はNEC PC-9801NS、大容量20MB HDD搭載モデル!MS-DOSは6.22より3.30が好き)、 という筋金入りのコンピュータ好きで、小学校高学年の頃には既に学校内の生徒用コンピュータの運用管理に携わっていました。

中学/高専の間は他人のコンピュータやネットワーク関連を触ることが意外にも少なかったのですが、 自分のコンピュータにLinux(Kernelが2.4とか2.6の時代)をインストールしてWebサーバを立ててみたり、 VPNサーバを立て、外出先から当時出たばかりのスマートフォン(Windows Mobile機に64kbpsの2xパケットPHS回線)で 自宅のパソコンに接続して遠隔操作したりと、Linuxやネットワークに関する諸々に面白みを感じて学び始めていたところです。
特に、それまでは何かしらの有線ケーブル無しには実現出来なかった遠距離通信が、電波を利用して民間人でも容易に利用できることに感銘を受け、 この頃から無線通信に対する興味関心が強まっていました。

そして、大学編入後に研究室のサーバ・ネットワーク周りの運用管理をほぼワンマンで実施し、 この時の経験やスキルセットを評価していただき、DeNAへjoinすることになりました。

社内情シスエンジニアの日々

DeNAにjoinしてから今までで一番長く所属していたのが社内情報システムを運用管理するIT戦略部で、 当初はヘルプデスクの一員として社員が利用するコンピュータに関するトラブルシューティングを主な業務としていましたが、 その中には難度の高いトラブルが数多くありました。

最も困難だったのは、特定の拠点で運用しているコンピュータが起動直後にクラッシュするという致命的な現象が突然複数台のコンピュータで発生したもので、
原因究明のためにかつて趣味で触っていたデバッガを引っ張り出して分析を進め、 業務に必須な2つのソフトウェアが干渉しあっていることを突き止め、 問題が発生している拠点へ代替コンピュータを運び込む…数分前に現場で実施できるワークアラウンドを確立し、難を逃れたというものがあります。

ここまで困難なトラブルは稀でしたが、ネットワークに関するトラブルは毎日のように発生しており、 その原因は多岐に渡るもので、コンピュータのハードウェアまたはソフトウェアに由来するもの、 ユーザがネットワークを利用している場所に由来するもの、ネットワーク機器に由来するもの… 非常に複雑に絡み合った要素があるため、得られた情報から如何にして尤もらしい原因を素早く推測し、迅速にユーザの不便を解消するか、 ということに全力を尽くしていました。(所謂Fix-It-Guyでした)

ネットワークインフラエンジニアに転身したきっかけ

社内情報システムエンジニアとして従事していたタスクは多岐に渡りますが、 ネットワークに関するユーザからの相談やトラブル報告、インフラ部門であるIT基盤部からの調査&対応依頼は一定の割合を占めていて、 それらに広範囲の知見や技術を持って対応できるのも私のバリューの一つでした。

特に、DeNA社内のネットワークは有線/無線共に高度な認証機構や通信機構が整備されており、 更に複数のオフィスやクラウドサービスと相互接続しているため、一般的な家庭内ネットワークと比較してトラブルの要因が多岐に渡ります。

これらの背景から、社内情報システムエンジニアとして私が関わっていた案件でも ネットワークに関するトラブルシューティングと解決に要する高いレベルの知識や技能が必要で、 日々調査や検証・学習を行い、自宅内にDeNAのネットワーク構成の一部を再現した疑似オフィスネットワークを構築するまでに至りました。 CiscoのL2スイッチ
CiscoのL2スイッチ 自宅基幹NW機器
自宅の基幹ネットワーク機器(GE-PON-ONU+Cisco 891FJ+pfSense搭載PCルータ+PoE L2スイッチ) 無線LAN アクセスポイントとSIP電話機
Ciscoの無線LANアクセスポイントとsnomのSIP電話機

そんな中、IT基盤部からネットワークグループでの業務に挑戦してみないか、というお誘いを受け、 IT戦略部での業務で蓄積されたクライアント側の知見や技術を生かしてNOCの一員としてDeNA全体のネットワークの向上に寄与したい、 という希望が自分の中で育ち始めていたこともあり、 数ヶ月の移行期間を経て、2022年6月に正式にIT基盤部ネットワークグループへ移籍しました。
(ネットワークグループにはNetwork Operation Centerという別名があり、社内では専らNOC/nocという略称が使われています)

NOC移籍直後のチャレンジ

NOCへ移籍して最初に取り組んだことは、DeNAという組織内のネットワークがどのような構成で成り立っているか、を学ぶことでした。

例えば、渋谷スクランブルスクエア内の渋谷オフィスで稼働する無線LAN接続のコンピュータからクラウドサービス上に構築されている社内サーバへの通信、 という一般的なユースケースでも、通信経路上の機器の構成や役割を十分に理解していなければ、 トラブルシューティングや構成変更といった一連のネットワークに関わる作業をすることが出来ません。

幸い、ネットワークに関するある程度の事前知識や経験があったこと、個人的な興味で大手NW機器メーカの製品を所有していたこともあり、 全く知らないカテゴリの知識というのは少なく、どちらかといえば「中途半端に知っている知識をより実践的なものにする」、というものが多かった印象です。

無線という見えない課題

技術や知見のキャッチアップ期間を終え、実務に取り組むようになって以来、最も困難かつ興味深い事項が無線LANに関することでした。 銅線や光ファイバといったケーブルを媒体とする有線ネットワークと異なり、無線LANは空間中を伝播する電磁波を用いて通信を行うことからトラブルシューティングにはより多くの要因を検討する必要があります。

特に、環境に依存する要因については慎重な調査が必要で、例えば2.4GHz帯では電子レンジや一部のコードレス電話機の影響を受けますし、
5GHz帯では一部の周波数(チャンネル)が気象レーダで優先的に利用されている(これを一次業務と呼びます)ため、 無線LAN機器が気象レーダの信号を受信した場合最低でも60秒間はその周波数を利用することが出来なくなるため、 立地や建物の構造、近隣の気象レーダの情報などを勘案して設計と運用をしなければなりません。
また、建物内で複数の無線LANアクセスポイントを稼働させる場合、それぞれの電波が互いに干渉しないよう、現場での測定や調整が必要不可欠です。

これらの課題を克服し、安定かつ高速な無線LANを提供しつづけるには電波そのものに対する知識や技能が必要ですが、 幸い私は高専生時代に基礎を学び国家資格(第一級陸上特殊無線技士/第二級海上特殊無線技士)を取得しており、 更に趣味としてアマチュア無線を始めていたため、これらの知見は一定以上のレベルに達していました。

更に、端末となるコンピュータについての知見も非常に多彩かつ詳細なものを有しているため、 端末側の問題(ドライバやソフトウェア、OS等のソフトウェア要因とそれらが動作するハードウェア要因)についても詳細な調査や検証が可能となっていました。

とはいえ実際に運用されているネットワークに対するトラブルシューティングや改善には今まで以上の努力が必要で、 今でも学習や実験を繰り返し、知見を深めることに全力を注いでいます。

お手軽サイズの無線スペクトラムアナライザ
電子レンジ動作中に2.4GHz帯の電波状況を観測してみました。予想外に強い電波が漏れてます。 5GHz帯無線LANの通信中に測定したスペクトラム
無線機器を必要以上に(設定可能な範囲で)強い出力で動作させると、 測定器すらその電波を正確に捉えることができなくなります。

なぜ「広く深く」を追い求め、真因を追求するのか

コンピュータや無線通信といった技術に興味を持ち始めて以来、私は常にその技術を成す要素を可能な限り詳細かつ広範囲に学び続けています。
コンピュータであれば何故半導体が人類に電子計算機を広くもたらしたのか、無線通信であれば電気がどうやって空間中を飛んでいくのか… ともすれば豆知識以上のものには成り得ないようなレベルまでの知識を蓄え、実験を通してその知識を技術に変換しています。

その場の課題を即座に解消するだけであれば、このような「広く深く」の体勢は時間を浪費するだけになりますが、 課題の真因を追求し根本治療をするためには、自身が持っている知識・技能を総動員しなければなりません。 そのような場合において、私の「広く深く」という生来の生き方が活躍します。

これらの姿勢の根本には「何かが動く仕掛けを理解したい」という追求心だけではなく、 「トラブルで困っている人々をなんとかして助けたい」という精神性が大きく寄与しています。

技術的なことに留まらず、困っている人をなんとかして助けたいという姿勢が私の中に強く根付いており、 社内情報システムエンジニアとしてのヘルプデスク業務や、社会人以前の様々な経験がこの姿勢を強固なものに育て、 NOCへ移籍してもこの基本姿勢が揺らぐことはありませんでした。

豊富な情報源から技術的に必要なことを吸収することは勿論必要ですが、 それらの知見を人々のために活かすのであれば、「誰かの悩みを自分が出来うる技術で解決したい」 という姿勢は何より大切で、どちらかが欠けていても真のdelightに辿り着くことは出来ないと考えています。

おわりに

大分長い記事となってしまいましたが、私の技術者としての生い立ちや実際に経験したこと、 それらの根幹をなす「探究心」、そして「誰かの悩みを解決したい」という2つのモチベーションについて、 自分なりの言葉で書き下ろすことを試みてみました。

もし、(ネットワークに限らず)エンジニアを志す方々がこの記事を通して、 私が考えるエンジニアとしての真の価値や姿勢とは何か、ということを感じていただければ幸いです。

73&88 de JK1KHW / Tadayoshi, MIURA

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