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2022.05.31 その他

「受身から攻めのQA」に至るまでの道のり

by Kenji Maekawa

#qa #qmo #development-process

はじめに

2022年3月17日に、DeNA TechCon2022が開催されましたが、メインセッションとしては初めてQA(Quality Asuurance)パートの発表を行うことができました!

「受身から攻めのQAへ!事業を成功に導くQAへの変革」と「CS×QAシナジー発揮!ユーザ体験向上ハンドブックのススメ」という2つの発表となり、QA業界の方にも参考にしていただける、DeNA TechConとなりました。

今回は、2つの発表のうち「受身から攻めのQAへ!事業を成功に導くQAへの変革」の裏話を紹介していきたいと思います。QAの立ち位置を高めたい、QAでも事業に貢献できる組織にしたいと考えている方に参考にしていただければ幸いです。

「受身から攻めのQA」裏話

長年のQA担当の悩み

DeNAには品質管理部という部門名でQAの役割を担っている組織がありますが、皆さんの会社には、QAという組織が存在していますでしょうか?
エンジニアがテストも行うので、QAという専門組織が無いという場合もあるでしょう。

QA組織がある場合でも、開発下流工程のテストをやる部隊という組織もあるでしょう。また、開発上流工程の成果物であるドキュメント(仕様書)を検証する役割を持っている組織もあるでしょう。

さらに進んだ組織では、開発プロセスやルールが正しく実行されているかを監査する役割も担当している場合もあるでしょう。

ただし、検証(監査)するということは、何かしらの検証対象となる成果物ありきのため、担当する開発担当によって、成果物の品質に差が出てしまうことが無いでしょうか?その場合には、改善を促していくのですが、そのタイミングでは時すでに遅いという状況になってしまうことが多かったのです。
いわゆる受身のQAになってしまっていたという悩みがありました。

解決手段

この受身のQAになってしまう課題を解決するために、DeNA QAで行きついたことは、QA担当も事業の中に入り、開発初期からのメンバーとして一緒に担当していくことにしました。

事業に入るタイミングは、PjM(Project Manager)が選定される位のタイミングが最適で、導入する開発プロセスやプロジェクト管理手法などを、いわゆるプロジェクトが発足される早期段階で、QAの目線を導入していきます。さらには、プロジェクト進行中には、開発成果物自体の質を向上させることで、QAの検証前に品質を高める活動を行います。

W字モデルをベースに、担当するイメージ図を描いています。
なお、従来の検証を主体で行うQAの役割と区別するために、PjMや開発と一緒に動く役割をDeNAでは、QMO(Quality Management Office)という言葉で呼びます。※ネーミングの理由は後述します。

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事業に入り込むQMO発足までの道のり

DeNAにて、QMOの存在が簡単に認められたかというとそうではありませんでした。品質管理部門がここまでたどり着くには、実に3年の歳月がかかりましたが、その苦労話や道のりを書いておきたいと思います。

①メンバーの意識改革

まず最初にやったことは、QAメンバーの意識改革でした。

「モノづくりをサポートする」
    ↓
「モノづくりを担当する」

へ変えていく必要がありました。QAメンバーは、どうしても検証中心となっていくため、受身の意識が強かったのですが、モノづくりを担当している当事者意識に変えていきました。

「欠陥を見つけて直してもらう」ではなく、「欠陥が無いように最初から作る」を意識し、そのために何をやらないといけないかを考えながらQA活動を推進しました。部門方針に掲げることにより、個人の目標設定にも入れ込むことで、評価にもつなげるような取組も実施しました。この、意識を変えていくことが、実は一番時間がかかったことかもしれません。

なお、TechConで発表したもう一つのQAの発表である、「CS×QAシナジー発揮!ユーザ体験向上ハンドブックのススメ」の活動もまさに利用者の気持ちに立って当事者意識でモノづくりを担当するための事例でもありますので、興味がある方はそちらも覗いてみてください!

②成果を可視化

縁の下の力持ちと言われがちなQAですが、縁の下では終わらず、やはり成果を可視化することが大事だと考えています。

今回の成果というのは、QAでよく実施する品質状況の可視化の事ではなく、QA担当が事業の早期段階に参画し、一緒にモノづくりを担当することによる成果を示します。成果を可視化することで、QAメンバーの自信にもつながりますし、事業への貢献度を示すことができます。

成果の可視化の方法はいろいろありますが、最も有効なものを1つ挙げると、早い段階から品質活動を行うことによる(いわゆるShift left)、コスト効率の可視化となります。

品質保証の世界では良く知られる、欠陥の修正コストと開発フェーズの関連性を示したグラフがあるかと思いますが、これを使ってコスト効率化を出しています。

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出典:ソフトウェア開発 201の鉄則(日経BP社)

開発早期段階で検出された欠陥は、例えばテストフェーズで検出されるより1/20のコストで収まりますので、それにより、Shift leftすることによるコスト削減の数字を可視化していきました。(成果の可視化を色々な視点で実施してきましたが、やっぱりコストで示すのが一番有効でした!)

実際に、QAが受身であった時代のデータと、QAが早期に活動したデータを比較するのもわかりやすく、明らかに市場やテストフェーズ(いわゆる開発後半フェーズ)での欠陥は減りました。開発後半フェーズでの欠陥が減るということは、対応する開発の工数も確実に減りますので、開発者も余裕をもってリリースすることができました。

③プレゼンス向上活動

成果を可視化したら終わりではなく、しっかり経営や事業部にQAの活動成果を報告することで、プレゼンス向上活動を行ってきました。やはり、アピールが大事です!しっかりQAの成果を示すことにより、事業にどれだけ貢献しているかを理解してもらえます。

特に、今まで課題が多かったプロジェクトで成果が出た時は成果を報告し、QAがしっかり事業に入り込むことによるメリットを感じてもらいました。

このような活動を、約3年間行っていたところ、DeNAでのQAの役割の重要性があがることになり、今では事業に入り込みプロセスの改善を行っていくQMOという組織まで、立ち上げることができました。
成果を挙げながら啓もう活動を行い続けた3年間といっても過言ではありません!

新たな組織QMOとは

QMOの役割

QMOの役割は、主に以下を実行しています。

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もちろん社内ではもう少し詳細な役割は明記してはいますが、イメージはつかんでいただけると思います。やはりPjMと共に活動する役割が多くなります。

また、役割名をPMO(Project Management Office)ではなく、QMO(Quality Management Office)にした理由は、品質管理部内に組織があることも理由ですが、より品質という視点を強化してモノづくりをしていく意思がありますし、PjMのお手伝い役ではない組織という印象にしたかったからです。

QMO活動状況

DeNAでのQMOの浸透度合いですが、TechConでも発表したように、ヘルスケア事業領域では取組がかなり進んでおります。今では、品質管理部のメンバーが兼務(出向)という形で事業部に籍を置き、活動を行い事業部当事者として本格的に参画するようになりました。

エンタメ事業領域に関しても、QMO活動の取り組みを開始しました。これから成果を出して行く段階ではありますが、今は新しい開発プロセスの進め方を事業部と一緒に検討しており、大きな期待を持たれています。

最後に

ここまでかっこよく語ってきましたが、DeNAでQMOの役割はFY21から取り組んできており、グループとして正式に立ち上がったのは、FY22になってからで、まだまだ若いグループです。

いま、まさにDeNA全体のQMOの進め方や成果の示し方を試行錯誤しながら進めている段階で、自分達で組織を作っていく面白い段階になっています。DeNAでQMOを一緒に進めていく仲間も探しておりますので、是非興味のある方は、ご応募よろしくお願いします。
同時に、QAメンバーも募集しております!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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