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DeNAのエンジニアが考えていることや、担当しているサービスについて情報発信しています

2022.03.04 CTOが訊く

CTOが訊く#4 Perl Mongerが語る これまでとこれから

by Atsushi-Kobayashi

#perl #google-cloud #isucon #yapc

「CTOが訊く」は、DeNA CTO の @nekokak (ねこかく)こと小林 篤が、社内のメンバーに、その人となりや仕事っぷり、そして野望を訊く、というコーナーです。

第4回の対談ゲストは、 @karupanerura (かるぱねるら)こと佐藤 健太。

当記事の内容は YouTube でもご覧いただけます。 当記事では、お読みいただきやすいよう一部編集して掲載しております。

Perlとの出会い。DeNA入社のきっかけ

▲左から@karupanerura、@nekokak

@nekokak
CTOが訊く第4回は karupanerura さんに来ていただいております。 僕はいつも「かるぱくん」って呼ばせてもらってるんですが、それではかるぱくんの簡単な自己紹介をお願いします。

@karupanerura
佐藤 健太と申します。

DeNA には2016年に入社して、認証認可基盤の周辺サービスの開発・運用をメインでやってきました。本日はよろしくお願いします。

@nekokak
よろしくお願いします。かるぱくんとは、かるぱくんが DeNA に入る前から Perl のコミュニティでいろいろとやり取りさせていただいたりとかして、僕がオープンソースとして出したライブラリに対して、意見をいただいたりとか、僕の作ったやつをさらに進化させたりしてくれていました。

若い方なんですが、Perl のコミュニティの中ではかなり活躍されている人で、かるぱくんが DeNA に来る!ってなったとき、僕はすごく嬉しくてですね。一緒に仕事させていただいたりとかもあったんですけれども、本当に今 DeNA で活躍されている方なので、今日はいろいろと話を聞いていきたいなと思っています。

早速質問していこうと思うんですが、そもそも、かるぱくんが Perl を使い始めたきっかけはなんだったんですか?

@karupanerura
僕が中学生の頃に『罪と罰』という CGI(Common Gateway Interface)ゲームがあったんですけど、それを改造してホストするのがインターネット上で流行ってた時期がありまして。

『罪と罰』が Perl で書かれていて、まだ当時はよくわからなかったので見様見真似だったんですけど、そのゲームの仕様を変えるために Perl のコードを触って、改造してホストをした経験が最初でした。

そうやって「Perl を触る」スキルが最低限身に付いてきて、「日々のいろんな面倒なことを Perl にやらせる」というのを学生時代の頃から時々やっていました。それで就職活動をする時に「自分の一番の強みは何なんだろう?」と考えて、当時は C 言語を一番やっていましたが、Web サービスにとても興味があったので、「Web に近くて自分が得意なもの」ってところで Perl が残って。

当時は Perl でのコミュニティもとても元気だったので良さそうだと思って、Perl を使っている会社を探して前職の会社に入社しました。

@nekokak
Perl を中学生の頃から触ってる、ってすごいですよね。「Perl を活かせるところ」という切り口から前職の会社に入られたって話なんですけど、そんなかるぱくんが DeNA に入社するきっかけというか、どういうことをやりたいなと思って DeNA に入ったのか教えてもらっていいですか?

@karupanerura
前職ではソーシャルゲームの開発をしていたのですが、僕が前職の会社に入社した2011年頃は Mobage をはじめとしたソーシャルゲームプラットフォームに展開するソーシャルゲームの開発が主流でした。スマートフォンもだんだん流行り始めてはいたんですが、いわゆるガラケーの人気は衰えることを知らず、まだまだガラケー向けの開発が主流でした。

前職では主に Perl を使ってソーシャルゲームの開発を続けていたんですけど、ある日 ISUCON というイベントに出会いまして、パフォーマンスチューニングに興味が湧きました。

パフォーマンスチューニングに関していろいろやっていく中で、「大規模トラフィックに日常的に関わる仕事がしたい」と思うようになり、いろんな会社に話を聞くうちに DeNA も良さそうだなと思って最終的に入社することに決めました。

@nekokak
なるほど、なるほど。僕も似たような感じでした。実はかるぱくんとはかぶってないものの前職の会社が一緒なんですよね。

そういう意味で言うと、かるぱくんは入社してから DeNA の中でもトップクラスのトラフィックを捌かなきゃいけないプロジェクトに関わってやられていたと思うんですけど、入社前やりたいと思われていたことができている感じなんですかね?

@karupanerura
はい。

@nekokak
それは素晴らしい。

参加するYAPCから、運営するYAPCへ

▲@karupanerura

@nekokak
Perl コミュニティの活動とか徐々に広げていく中で、いろんな人と知り合ったりとかあるじゃないですか。 かるぱくんの中で思い出深かったり、印象的だったことってありますか?

@karupanerura
そうですね、まずはやっぱり YAPC (Yet Another Perl Conference)ですかね。

僕は2011年に新卒で前職に入社したんですけど、その年に会社の先輩から「YAPC に参加してみないか」と誘われまして、前職で当時は会社的に YAPC への参加を推奨するような感じになっていたので、どんなものか知らぬまま YAPC に初めて参加してみました。

@nekokak
初めて参加した YAPC って、2011年ですよね。2011年って確か、東京ビッグサイトで開催された時でしたっけ?

@karupanerura
いえ、2011年は東京工業大学でやっていた頃で、その時は宮川達彦さんがゲストとして話していて Carton の発表したタイミングだったと思います、確か。

@nekokak
お〜懐かしい。なるほど、なるほど。

東工大のキャンパスでやっていた時って、芝生の上で Perl Monger が寝そべりながら餃子食いながらビール飲んで、ってやってましたよね(笑)。

@karupanerura
やってましたね(笑)。

@nekokak
YAPC に行った時に、自分の心境の変化みたいなのってあったりしたんですか?

@karupanerura
そうですね、「熱」みたいなものを感じてました。

有名な海外の Perl モジュールの開発者であったりとか、Perl committer もいたかもしれないですけど、そういった方々がいらっしゃっていて、元々何か企画があったわけではなかったかと思うんですけど、突然会場の隅に集まって座談会が始まったりとかしたり。

@nekokak
ありましたね〜うん、うん。

@karupanerura
あとは、懇親会でも絶えず Perl だったり、Web 開発に関する話をしていたりなど、かなり「技術に対する熱」を感じてですね。何というか、その「熱」に当てられたというか(笑)。

@nekokak
確かに、僕も他のコミュニティのことをそんなに詳しく知ってるわけじゃないですけど、あの時の Perl のコミュニティの盛り上がり方って他のコミュニティに比べると、一段階高い熱量を発してたなっていう感じはすごくありましたね。

@karupanerura
そうですね。

@nekokak
かるぱくんってたくさん発信してる方だと思うんですけど、その発信していくきっかけみたいなことって何かあったんですか?

@karupanerura
Twitter とか、他の人の書いているブログを読んでいくにつれ、自分も同じようなことができるんじゃないかと思いまして、それでブログを始めたりだとか。

実は初めて参加した YAPC で LT(ライトニングトーク)もしてまして。

@nekokak
あ、そっかそっか。確か、2011年頃の LT って当日なり前日の夜ぐらいから募集が始まって、飛び込みで参加できる感じでしたもんね。

@karupanerura
はい。

@nekokak
じゃあ、初めて参加してその会場の熱量だったりとかに「ああ、すごいなあ」ってなって、「ちょっと自分もやってみよう」みたいな、そういう盛り上がりが自分の中に作れたっていう感じなんですね。

@karupanerura
そうですね。

@nekokak
ちなみに、初めて LT した時の気持ちとか覚えてます?

@karupanerura
とてもとても緊張してたのは覚えてるんですけど(笑)。緊張して話すので精一杯!というような感じでした。

@nekokak
そうですよね、東工大で開催してた頃って数百人規模の観客が会場に詰めかけていて、しかも LT って結構、登壇者がすぐ交代していくので、ちょっと雰囲気が違いますよね。それをいきなりやるってね、心臓がバクバクしてたと思うんですけど、その経験が情報発信するいいきっかけになってるんですね。

▲@nekokak

@nekokak
今では YAPC を運営する側になられていますが、2022年の YAPC はどういうコンセプトや想いでやりたいと考えられたんですか?

@karupanerura
話としては去年に遡るんですけど、去年は YAPC::Kyoto というカンファレンスを主催しようとしてたんですが、「コロナ禍で人を集めてカンファレンスするのは難しいよね」ということで、一旦延期とさせていただきました。

じゃあ、今年度どうやってやっていこうかと考えた時に、やはりまだオフラインで集まってカンファレンスをやるのは難しいだろうというところから、「オンライン上で何かできないか」とまず考えました。

ただ、運営側もそうですけど、参加者の皆さんもオンライン上のカンファレンスにまだまだ慣れていない中で「YAPC に来た!っていう体験を提供できるのか」ということを運営として第一に考えました。

去年はそれがなかなか難しいだろうと思って YAPC という名前をつけるのは諦めたんですけど、逆に今年は YAPC という名前をつけて、オンラインではありながらも「YAPC に参加したぞ」って感じてもらえるようなカンファレンスにしたい、できる、と考えてやっています。

@nekokak
コミュニティの運営ってすごい大変なことがいっぱいあると思うんですよ。

でも、参加される方々が「やってよかったね」「こういう場があったから、久々に集まれたよね、話せたよね」って思ってくれたらいいなと僕は思うんですよね。

そういう場を作るのもコミュニティだったりとか、こういうカンファレンスだと思うので、運営ほんと大変だと思うんですけど、今後もいろんな取り組みを DeNA としてもいろいろとサポートしたいなと思うので、一緒に頑張っていきましょう!

@karupanerura
はい、ありがとうございます。

ISUCONのお題制作。実務に近いアプローチで高得点を

▲左から@karupanerura、@nekokak

@nekokak
Perl コミュニティ以外の活動で、かるぱくんが Perl を使った取り組みとかって何かあるんですか?

@karupanerura
Perl のコミュニティ以外の活動ですと、ISUCON ですね。 ISUCON8 の予選の問題を出題させていただきました。それは他の DeNA 社員と協力して DeNA として出題させていただいたんですけど。その際にお題となるアプリケーションを最初 Perl で僕が書きましたね。

@nekokak
「最初は Perl で書いた」ってことは、最終的には違う言語にコンバートというか、書き直すってことをやったってことですよね?

@karupanerura
そうですね。他の言語へ書き直していただくのは、ボランティアの方を募ってその方に手伝ってもらったりとかもしたんですけど。

最初に「こんな感じのアプリケーションをチューニングしていってください」っていうお題のアプリケーションをまず Perl で書き始めて。それに加えて、このお題を本当にカリカリにチューニングしたらどこまでいけるのか?っていうところを検証するのも Perl でやりました。

@nekokak
なるほど。

ISUCON って本当に多くの人が参加されていて、毎年「どんなお題が出るんだろう?」ってみんな期待しているわけじゃないですか。その出題側にまわるって結構プレッシャーがあるんじゃないのかな、と思ったんですけど、問題を作成する側としてどんな工夫をしましたか?

@karupanerura
当時の ISUCON は、問題を解く側も問題を作る側もいろんな工夫をして取り組んでいたのですが、運営者側としても参加者側としても悩ましいものがありまして。

ISUCON は一定台数のサーバ上でアプリケーションや middleware を動かして、その中でできる限りのチューニングをする、ということをやるわけですけど、アプリケーションが単純すぎると、メモリ上ですべてのデータを管理しきってしまって、データベースなど middleware を使わない構成に変更して勝つということもできてしまうんですね。

そのような解き方もできていいとは思うんですけど、一方で僕の想いとしては、できればより実務に近いアプローチで高得点が取れるような問題にしたいと思っていました。

自分自身も当時は ISUCON の問題を出題するのも初めてという、文字通り「初めてのチャレンジ」ではあったんですけど、できる限り ISUCON 特有のアプローチをやりにくくして、その上で現実的なアプリケーションのチューニングに近づける努力をしていました。

@nekokak
なるほど。 自分が慣れ親しんだ、手に馴染んでいる Perl で実装してみて、意図通りになっているか検証もまわしてみて、それを確認しながら問題を制作された感じなんですね。

@karupanerura
はい。

@nekokak
ISUCON みたいに過去からずっと続いているものに対して「ちょっと違うエッセンスを入れてやろう」みたいな形で取り組むのって、エンジニアのいいところな気がしていて。「同じものを繰り返しやっても面白くないだろう」みたいな感じでやっていくのがまさに、かるぱくんのいいところが出たのかな、と今お話を聞いてて思いました。

『「Perl はもうオワコンだ」―――そう言われていたのがすごい気に食わなくて』

▲@karupanerura

@nekokak
そういった Perl の活動をコミュニティの一員みたいな形で活動されていた中で、 JPA (Japan Perl Association)という一般社団法人の理事になられて、僕も代表理事をやらせてもらった時にはかるぱくんと一緒に「Perl のコミュニティを活性化させよう!」と取り組んでましたけれども。

かるぱくんが理事になって、「自分はこういうことをやってみたいな」とか考えてたことってあるんですか?

@karupanerura
2017年頃だったかと思うんですけど、もう既に Perl で新しいアプリケーションを作る会社も減ってきていて、Web 開発のトレンドが静的型付け言語へ移り変わっていった時期だったと思います。当時「Perl はもうオワコンだ」とか「Perl なんてまだ使ってるの?」みたいなことがちらほら言われていたと記憶してます。

すごいストレートな言い方をすると、そう言われていたのがすごい気に食わなくてですね(笑)。なんで気に食わないかというと、Perl ってまだまだ役に立っている言語ではあるんですよね。

なかなか、新しく使う機会はやっぱりどうしても減ってしまうものではありますが、開発ツールの一部として使ったり、あとは昔作られたアプリケーションを、新しく他の言語で書き直すことってどうしてもとてもコストがかかるので、Perl を Perl のまま運用して、そのまま改修していくのが短期的なコストは一番安い。

そういったことをスピード感を持ってやっていくためにはまだまだ Perl のスキルは重要だし、それが蔑ろにされるべきではないのに、そこに対して斜に構えて発言する人がなかなか多かったのが気に食わないなと思っておりまして(笑)。

そういった人々の目線を変えるのに少しでも役に立つことはできないか、と発信をする上で JPA の代表っていう立場をある種利用させていただけないかなと考えたという感じです。

@nekokak
僕も今、DeNA の CTO として新卒採用とかいっぱいやってる中で、学生さんに「プログラミングを学ぶきっかけ」みたいな話を訊くと、プログラミング学習支援サービスを利用したことがきっかけになってる方が多いんですよね。

今、JPA って Perl 入学式 (プログラミング初心者向けのPerl勉強会)のサポートとかもやってるじゃないですか。 あれ、すごい良い取り組みだな、と思ってて。プログラミングをやったことがない人が参加して、講師の人たちが結構細かく、サポートしてくれて簡単なウェブサービスを作ります、みたいなことをやっていると思うんですよね。

そういうサポートを、継続的にやってるのは本当に素晴らしいなと思ってて。かるぱくんが今言ってたみたいな形で JPA が「まだ Perl はこういうところで使えるんだぞ」、「便利に使えてる部分もあるぞ」っていうのを示し続ける、サポートし続けるっていうのは大変だと思うんですけど、本当に意味のあることをやられているなって見ててすごく感じます。

DeNAでの Perl 活用事例。モジュールを使い倒す

▲@nekokak

@nekokak
DeNA に入ってからどういうところで Perl を使うことがありましたか?

@karupanerura
自分が今、関わっているプロジェクトは元々 Perl で開発が始まったもので、比較的古いコンポーネントというか、古いサービスの開発・運用ってあたりで主に Perl を使っていました。

@nekokak
なるほど、なるほど。

@karupanerura
他にも最近は、Go や Java といった言語で一部のサービスを作り直したりとかもしているんですけれども、その中でもやっぱりIDE(統合開発環境)のリファクタリング機能だけでは賄いきれないリファクタリングをしたい場面があって。

例えば、命名規則を変更したい場合に、その命名規則を1つ1つ変更していこうとすると IDE ではコンストラクタメソッドの名前を変更して、その上で更にそれが関連するクラス名の一部を変更して、、、みたいなことを繰り返さなければならないわけですけど、Perl で文字列置換で一括で行ってしまえば、そのあたりの手間をかなり減らすことができたりとか。今、IDE を使った開発が主流になってますけど、その中でも Perl を開発のツールの1つとして活かして今使っています。

@nekokak
なるほど。

昔ながらのというか、昔から作られているものはそもそもコードベースが Perl のものもあるし、それを運用することもあれば、今は別の言語で開発をしていても、ちょっとしたテキスト処理だったりとかで Perl をツールとして使っていく、みたいなのやり方で使い分けているっていう感じですね。

@karupanerura
はい。

@nekokak
先程「Perl がオワコンと言われるのが気に食わない」みたいなお話もあったと思うんですけど、かるぱくんが今やっている中で、Perl の面白い使い方だったりとか、DeNA の中でのユニークな使い方みたいな、これを読んでくれている人にとって「あ、こんな使い方もあるんだ」というきっかけになりそうなことは何かありますか?

@karupanerura
運用ツールの中での話なんですけど、Perl はスレッドがないので基本 Web サーバを実装する際にも prefork モデルを採用することが多いと思います。

DeNA でも prefork モデルのサーバを運用してはいるんですけど、その中で prefork モデルの運用で問題になってくるのが『prefork したプロセス(worker プロセス)の枯渇をいかに防ぎながら運用をするか』っていうところが1つのキーになってきます。どの worker が今利用中で、どの worker が今フリーなのか、っていうことをモニタリングできないとなかなか運用は難しいんですけど、それをモニタリングするために” Plack::Middleware::ServerStatus::Lite ”というモジュールを DeNA では使っています。

それを使って worker の占有数を監視する上で、どのようにそれを監視するのかっていうところが1つのテーマになってきます。ひとつポピュラーな方法としては、その middleware で worker の占有数を返すエンドポイントを提供して、それを叩いてどれだけ占有されているのかというステータスを返すことがまず思いつくところではあるんですけど。ただ、それをやってしまうと、それを取得するリクエストでもやはり worker を占有してしまうので高負荷時にどうしてもそれは困ってしまう。

ではどうするのか?というところで、その” Plack::Middleware::ServerStatus::Lite ”は実は、” Parallel::Scoreboard ”というモジュールを使って、ファイルでその状態を sync しているんですけど、その” Parallel::Scoreboard ”に保存された生のデータを直接監視するという方法を DeNA の基盤のシステムで行なっています。これはとても面白いアプローチだと思いますね。

@nekokak
なるほど、なるほど。

実際そういうアプローチを見てみて、かるぱくん的にどう面白いなと思いましたか?” Parallel::Scoreboard ”だったりとかって、一応 plack の middleware としてはあるじゃないですか。仕組みというか部品は揃っている中で、それを組み合わせている部分のどこが特徴的だと思われたんですかね。

@karupanerura
普通に考えたら、その API を叩くためのエンドポイントを生やしてそれを使えるようにする分、サーバの worker 数の余剰を増やしたりとか、あるいはサーバ台数ごと余剰を増やしたりとか、そういった形で運用することがあると思うんですけど。

先ほども言った通り、そういった標準的なやり方だと高負荷時にどうしても問題が出るということで、それを避けるために Perl で作られたモジュールの実装の内部まで見た上で「最適な方法はこれでだろう」と判断して実装しているんだろうなあ、というところがすごい面白いなと思いました。

@nekokak
有りものをそのまま組み込んで使うというよりも、更にその先の「サービスをより安定的に、きちんとモニタリングできるように」みたいな観点で、そこから更に一捻り加えて、負荷をかけずにサーバのステータスを見れるように工夫しているところが「DeNA らしい使い方」みたいな感じですかね。

@karupanerura
そうですね。もう本当に「使い倒す」というか。

標準的な方法でももしかしたら充分であるかもしれないけれど、それを更に最適化する上でどこまで踏み込めるかっていうところで、事と次第によっては、中の実装まで読み込んだ上で「こういうアプローチをとれば良い」と判断してやってるところが非常に面白いかなと思います。

Perlの好きなところ、嫌いなところ

▲左から@karupanerura、@nekokak

@nekokak
ところで、僕も、かるぱくんも結構長年 Perl をやってるじゃないですか。そんな Perl を長年やってる身だからこそ思う、Perl の好きなところと Perl の嫌いなところを一つずつ挙げてもらっていいですか?

@karupanerura
はい。まず、Perlの好きなところは context ですね。結構、Perl って他の lightweight language と並べて語られることがよくあると思うんですけど、実際には『データの扱い方』の部分は他の言語とは異なっていて。

例えば、他の言語では int 型、String 型など、データに対してその具体的な型が何かしらあって、それを動的に扱うことができるということで「動的型付け」ではあるんですけど、Perl の場合はそこが Scalar っていう1つのものにまとまっていて。その Scalar をどの context で扱うかで、文字列か数値かみたいなところが変わっていたりとか、そういった特殊な一面があるんですよね。

それが最初はまどろっこしいなと思うこともあるかなとは思うんですけど、個人的にはそれがすごい好きで。とても自然言語的というか。そのデータを概念そのものとしてそのまま扱うことができて、そのデータの概念が文字列表現であるか、数値表現であるか、みたいなところを意識せずに、それをどのように扱いたいかを表明できるっていうところが僕が Perl の一番好きなところですね。

@nekokak
それ、僕もまったく同じ意見で、そういう風になったのってラリー・ウォールだからなのかなって思ってて。彼はそれこそ、言語学者的な側面も持ってるじゃないですか。だからこそ、「言葉の使い方」とか、「表現の仕方 」みたいなところをより自然にしようっていう形で設計したのかな、と感じたりはしますね。

じゃあ逆に、Perl のここはイケてねえな、ここはダメだなって思うところってありますか?

@karupanerura
そこもですね、残念ながら context なんですよ(笑)。

@nekokak
表裏一体みたいな(笑)。

@karupanerura
はい。表裏一体なんですよね。とても好きな反面、やっぱりそこが Perl の最も難しい部分にもなってしまっていて。特に他のプログラミング言語に慣れた人からすると、とても奇妙なデータの扱い方をするので「とても予想しにくい動きをする言語だな」と思われてしまう側面がどうしてもあるかなあと思ってるんですよね。

context がわかれば良いものではあるんですけど、やっぱりそれがわかってもらえないと良いものにはならないというところで、『Perl の良さとして context を知ってもらいたいけれど、その context の良さを知ってもらうのが一番難しい』っていうところがなかなか難易度が高いところかなと思っています。

@nekokak
わかります。ほんと、そうですよね。他の言語から来た人からすると、気持ち悪さが先に立っちゃいますからね。なかなか難しいですよね。

Perl を正しく知ってもらいたい

▲@karupanerura

@nekokak
今、かるぱくんが DeNA に入って、高負荷なサービスだったりとか『やってみたい!ということをやれてます』という状態とのことですが、いちエンジニアとして「次はこういうことをやっていきたい」「今後、チャレンジしていきたい」と思っているものを教えてもらっていいですか?

@karupanerura
はい。今は、内部で使うための新しい API の開発あたりをやっていたりとかするんですけど、その中で DDD(ドメイン駆動設計)だったりとか、比較的モダンなアプリケーションの作り方っていうところをちゃんと生かして開発に組み込んでいったりとか。 あとは、SRE(Site Reliability Engineering)的な文脈ですけど、システムの observability をいかに高めて、いかに安定した運用ができるようにしていくか、っていうところにとても興味があります。

@nekokak
なるほど。DeNA は、安定的にサービスを運用している会社ではありつつも、今後いろんなドメインに事業が広がっていく中で、通り一辺ではない開発や運用が必要だと思うんですけど、そういうことも含めていろんなドメインや仕組み、アーキテクチャの中でも安定的にシステムが動くように、SRE 的な形で関わっていってサービスの安定化を実現していくってことをよりやれればな、っていう感じですかね。

@karupanerura
はい。

@nekokak
かるぱくんは今 JPA の代表理事をやられていて、特にコロナ禍でコミュニティの運営とかもすごく大変で、言語のトレンドだったりコミュニティのトレンドみたいなところでも大変な運営は続くと思うんですけれども、 Perl に対して、「こういうことできたらいいな」という風に今考えられていることを改めて聞かせてもらえますか?

@karupanerura
はい、そうですね、個人的にはもっと「Perl を正しく知ってもらう」っていうところを進めたいと思っています。

先ほども言った通り、結構 Perl は誤解されがちな言語だとは思うので、そういう偏見を解いてまずは Perl を知ってもらう。 そして、あわよくば普段の仕事に生かしてもらい、僕ら sed とか awkとか普段の仕事の中で使う機会は多いと思うんですけど、 Perl もその選択肢のひとつに加えてもらって。Perl が便利な場面では Perl を使えばいいし、そうじゃない場面では今まで通りのツールを使えばいいので。

単純に、手札が一つ増えてできることが増えるのは、誰にでもメリットがあるので、それをもっといろんなエンジニアに知ってもらうということが今とてもやりたいところですね。

@nekokak
なるほど。僕自身も Perl に育てられていろんな経験させてもらったので、個人としても恩返ししたいなと思っています。

もし、かるぱくんがいろいろと取り組まれていく中で、何か僕で手伝えることがあればいつでも言っていただければと思いますし、 DeNA という会社自体も、これこそ Mobage をはじめ Perl でいろんなシステムが作られてきて、今の会社があると思っているんですよね。

なので、会社としてもちゃんとそこに対して contribute というよりも、もっと深く一緒にコミットメントして、一緒に協力しながらやっていくってことができたらなという風に思っているので、もちろん全体としてできることはいろいろと限られてくるとかあるかもしれないんですけど、積極的に連携してやっていければと思いますし、是非とも今かるぱくんが言っていた Perl の良さを伝えていくきっかけを一緒に作っていければと思いますので、引き続きがんばりましょう!

@karupanerura
はい、ありがとうございます。

@nekokak
本日は karupanerura さんに来ていただきました。ありがとうございました。

@karupanerura
ありがとうございました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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