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2026.05.28 その他

「使いこなす」より「使いまくる」!情シスの生成AI活用事例10選

by Kazuya Ichinohe

#corporate-it #generative-ai #google-workspace #notebooklm #ai-adoption #productivity #ai

こんにちは、DeNA IT戦略部 コーポレートオペレーショングループ(通称:CorpOps「コープオプス」)の一戸です。

いわゆる情シス部門で、その中でも私たちは経理・人事などコーポレートオペレーション領域で利用している全社共通システムの運用保守と業務改善を行っているチームです。

私たちは隔週で「AI Meeting」という会を開催しています。AIオールイン宣言以降、私たちの悩みは尽きませんでした。

どんなAIツールがあるのか、どのAIツールがよいのか、何ができるのか、どんな使い方があるのか、どんな業務に向いているのか、etc…

そこで、まずはAIに関するあれこれを、気軽に、ざっくばらんに相談・共有して、理想とするAIオールインの状態に、少しずつでも近づけるような場を作ろうということで、AI Meetingは始まりました。

ここで飛び交うのは「AIで業務が劇的に効率化して最高!」というキラキラな成功体験ではありません。「AIが言うこと聞いてくれない…」「自信満々に嘘をつく…」「結局、自分で直したほうが早い…」といった、現場の泥臭いリアルが語られています。

今回はこれまでのAI Meetingの中から、活用事例を10個厳選して紹介し、最後に少しだけマインドセット的なお話をしたいと思います。決して高度な使い方ではなく、難しい設定もありません。「AI活用、難しそう…」と思っている人にこそ読んでほしい実践記です。

CorpOps AI活用事例10選

①OCRとして利用する

テキスト情報が無いPDFの契約書から特定の条文を探すのは、地味に大変な作業です。

そこで、GeminiにPDFを渡し、「○○に関する記述がある箇所を抜き出して」と頼んだら、一瞬でその部分を特定し、テキスト化してくれました。

「収入印紙はいくら?」と聞くと、金額も答えてくれます。OCR用のツールを用意せずとも、生成AIひとつで簡単にOCRが出来てしまいます。

②リリースノートの影響調査を手伝ってもらう

SaaS製品のリリースノートが大量の文章になることがあります。これを全てを読むのは正直しんどいです。英語なら尚更。

そこでNotebookLMに、「最新のリリースノート」と「自分たちが使っている機能リスト」を読み込ませ、「私たちに関係ある部分だけ教えて」とお願いしてみました。すると、私たちが使っている機能の部分だけを抽出してくれました!

最初は文章形式で回答してきたので読みづらかったのですが、表形式で出力するようにプロンプトを修正することで読みやすくなりました。

③規格/標準/フォーマットを指定して品質のブレを減らす

何かしらの作業をGemini、NotebookLM、Claude等に指示すると、特に指定しない限り、テキスト形式で回答が来ることがほとんどです。この結果を別な資料やツール、例えばExcelやスプレッドシートに貼り付けて使おうと思うと、フォーマットが合わず、ちょっと不便な瞬間があったりします。

そこで、例えばテスト項目を作成する場合、「テスト項目名、概要、担当者をカンマ区切りのCSV形式で出して」のように厳密に出力フォーマットを指定すると、出力結果をスプレッドシートや別システムにそのまま貼り付けて利用できるため、作業が楽になります。

出力形式はCSVだけでなく、json、マークダウン等も可能です。会計システムへの投入データ作成なども、この項目&出力形式を指定する方法が有効かと思います。

ちなみに、ファイル形式だけでなく、業務フローの標準であるBPMNのように、図表のフォーマットを指定する方法もあります。単に「業務フローを描いて」と指示すると、品質のブレが大きいのですが、BPMNを指定することである程度出力を安定させることができます。

このように規格/標準/フォーマットを指定することで、AIの出力品質のブレを減らすことができます。

④サイドパネル系が意外と便利

GoogleスライドやスプレッドシートなどのサイドパネルにいるGemini、みなさんは使っていますか?私たちはあまり使っていませんでした。

ある日、何気なく経費データが並んでいるだけのCSVを開いて、サイドパネルに「この経費データ、グラフにして分析して」とお願いしたところ、瞬時にグラフを作ってくれました!そのうえ、「○○の数値が変わっていることから、事業のステージの変化を感じますね」というようにちょっとした洞察までしてくれました。他にも、関数や条件付き書式を指示に従って自動で作成してくれたりもします。

またConfluenceのサイドパネルにあるRovo(Atlassian の AI アシスタント)についても試してみました。自然言語で聞けるので、通常の検索機能よりも気軽に指示ができます。曖昧な要素も含めて検索してくれるためか、通常検索では見つからないが、Rovoに聞いたらページを発見できた、なんてこともあります。標準検索と組み合わせることで、情報の発見率が向上しました。

現在は、Rovoに要件が書かれたページを読み込ませ、補助情報としてGoogleドライブの資料を指定した上で、テスト仕様書を自動生成させることに挑戦しています。

⑤Google Meetの議事録を自動共有

Google Meetの議事録は マイドライブ > Meet Recordings に保存されますが、これを変える術が今はありません。誰かに共有しようと思ったら、権限付与をしたり、共有ドライブへコピーといった地味な手間が発生します。単発の会議なら良いですが、週次・日次の定例だと、なかなか大変です。複数の会議体があると、さらに大変になります。

そこでAIにGAS(Google Apps Script)を書かせました。「会議名に『Project A』って入ってたら、プロジェクトフォルダに自動で移しておいて」。たったこれだけの指示で、議事録を共有フォルダに移動するGASが、一瞬で完成しました。

議事録の自動共有なんて、地味で小さな効果に思えるかもしれませんが、こういう日々ちょっとずつ発生する手間を減らす事は、実は心の平穏を保つためにはとても大事だったりします。

⑥ダブルチェックをしてもらう

私たちの業務に「各種マスタの変更」というものがあります。各種申請に対応した手順を実施するだけなので、作業自体は簡単なのですが、ひとたびミスが発生すると、経理業務が止まったりと、影響が大きい業務です。このミスを防ぐため、ダブルチェックの運用を始めたのですが、この作業が思ったよりもメンバーの負担になっていました。

そこで、ダブルチェックをAIで実施してもらえないかを試してみました。方法は、手順を実施している作業の動画と、作業手順のWikiの両方をAIに読み込ませ、「この動画を見て、正しい手順で、正しい値を入れているかをチェックして」と依頼。結果、正誤判定に成功!

最初はGemini(Gem)を使って成功したのですが、使っていくうちにうまく行かないケースが増えていきました。そこで、作業手順のマニュアルだけでなく、「正解の画像(スクショ)サンプル」も見せてあげることで精度を上げていきました。「これが正解だよ、よく見て覚えてね」とAIに教える姿は、まるで新人OJT。

またある時は、申請内容と全く関係ない法人番号を見つけてきて「合ってます!」と自信満々に嘘をつき、AIと激しい口論に。インターネット上の広範な情報を拾おうとするGeminiの性質が裏目に出てしまいました。そこで、アップロードした資料の中だけで思考する「NotebookLM」に乗り換えることで解消しました。

このAIの利用方法は日々アップデートしています。動画はNotebookLMにアップできない時があったり、動画内の文字列を正確に読み取れないことがあったりと、不具合が発生したため、最新バージョンでは動画は止めていて、登録後の画面キャプチャと、依頼元となるスプシ等を突合して整合性チェックをする方式に変更しています。

(動画で手順が正しいかを判断させるより、登録したデータの内容に不備が無いかを重視する方向)

⑦「計算」させるな「計算機」を作らせろ

大量のマスタデータの整合性チェックという業務があり、「AIなら一瞬でしょ!」と思ってデータを投入してみたところ、平気で間違えたり、ハルシネーション(嘘)が発生したり…

そこでふと思いつきました。「AI自身にチェックさせるのではなく、チェックするプログラムを書かせればいいのでは?」と。

多くの生成AIはその性質上、基本的に計算をしているのではなく、次に続く「もっともらしい」言葉を確率で予想しているだけです。

AIは計算機としては弱いですが、プログラマーとしては超優秀。コーディングが得意です。「もっともらしい」コードをサクサク生成してくれました。

当然、1回で100点のものは出来なかったですが、自身で1からコーディングするよりも速く整合性チェックのプログラムを完成させることができました。

⑧「歴戦のプロ」になりきらせて壁打ち

「AI/DX/BPRコンサル歴20年のプロ」といったペルソナをAIに設定し、「私を厳しく指導してください」と指示し、毎日決まった時間に問いを投げてもらうというユニークな使い方がありました。いわゆるコーチング用のAIです。

本物の先輩や上司に時間をもらって何度も聞くのは気が引けますが、AIなら気兼ねなく何度でも壁打ちできるのが大きなメリットです。

⑨マニュアルから先生を作り出す

リース業務はこれまでスプレッドシートで管理していましたが、新リース会計基準により、新しくシステムを開発することとなりました。新システムでは、どのような項目を管理すべきか(項目定義)を検討する際にNotebookLMを活用しました。

業務の前提を理解させるため、以下の情報をPDF化して読み込ませました。

  • これまでのミーティング議事録や過去の作成資料
  • リースに関する法規や会計基準
  • 会計システムのマニュアル

DeNAで利用している会計システムにリース管理機能は備わっているのですが、現在は無効化されていて、実機で動作を試すことはできない状態でした。

しかし、使っていない機能であってもマニュアル自体は存在していたため、そのマニュアルをNotebookLMに読み込ませてみました。これにより、過去の検討経緯、リース業務知識、そして会計システムの仕様を知っているAI先生が誕生しました。

「今回作ろうとしている新システムに足りない項目はない?」と先生に質問しながら検討を進めることで、項目定義の抜け漏れを防ぎながら効率的に設計を進めることができました。

⑩議事録から記事を自動生成

今回の記事も、約7割は生成AIに書いてもらいました。かなり省力化できたと思います。

これまで行ってきたCorpOps AI Meetingの議事録をNotebookLMに蓄積し、以下のような指示を出しました。

CorpOps AI Meetingのブログ記事を書いてほしいです。 ・活動紹介、これまでAI活用について議論や共有されてきたこと、得られた成果、Tips、AIネイティブ時代に必要な気づきや示唆を伝えたい ・4000字程度にまとめる ・論調は過去のブログ記事に合わせる(過去のエンジニアブログ記事をいくつか指定した上で)

すると、あっという間に4000文字の「それらしい」文章が出てきました!が、「それらしい」だけで、よく読むと過不足や違和感はたくさんありました。

また、選ばれた事例には偏りがありました。「効率化」「自動化」など対外的にアピールしやすいキーワードを含むものが多かった印象です。

そこで、各回のアジェンダをGoogleカレンダーに保存していたので、それをインデックスとして、各回で得られた学びを整理するように指示し直したところ、偏りが無くなりました。

このように生成AIに方向付けをしていく指示は、丁寧に行う必要があり、テクニックの研鑽が必要であると感じます。

人間だと暗黙知として汲み取ってくれていた部分を言語化して指示に組み込んでいくことが、AIのoutputの質を上げるコツなのかもしれません。

以上、活用事例10選でした。これらのAIは一度作って終わりではなく、日々試行錯誤し、運用も含めて、AIをより良いものにしていくよう心がけています。

何かしら皆様の参考になれば幸いです。

CorpOps流 AIを使う上でのマインドセット

最後に、AI Meetingを通じて、メンバーが共通認識として持つようになったAIに対する考え方(マインドセット)をシェアしたいと思います。

「使いこなす」のではなく「使いまくる」

AIを完璧に使いこなそうとすると、「正しいプロンプトを書かなきゃ…」「何が正解なんだろう…」と身構えてしまい、最初の一歩が踏み出せなくなってしまいます。

完璧を目指すと、どうしてもスピードは落ちてしまいます。

一方、AIは凄まじいスピードで進化しています。モタモタしていると、あっという間にAIの進化についていけず、置いて行かれることになります。

そこで我々が掲げた合言葉は「使いこなすより、使いまくる」。

100点じゃなくていい。使っていくうちに、できるようになる。チームで知見や課題を相談・共有していけば、きっと私たちなりの正解に辿り着ける。そう信じて、楽しみながらチャレンジをしています。

ちょっと視点は変わりますが、AIは雑に話しかけても怒りません。どんなに頓珍漢なことを聞いても、同じことを何度聞いても溜息をつきませんし、怒りません。

人を長時間付き合わせるのは心理的ハードルが高いですが、AIなら大丈夫。

子供のように「これなに?あれやって!」と投げまくってみる。ある種の「図々しさ」のようなものが、AIネイティブを目指すためには必要かなと思います。

「それっぽい出力」を見抜くには「業務知識」が必要

AIは、中身がなくても「それっぽい」文章を作るのが非常に得意です。そのため、出てきた設計書や計画書が「なんか良さそう」に見えてしまいがちです。しかし、その中身が本当に正しいか、過不足無いかを見抜くには、レビューする人間に業務知識が不可欠です。

CorpOpsでは、AIを使いこなす事だけでなく、業務知識やスキルの向上にも取り組んでいます。人のレベルが上がれば、その人がAIを使ったoutputの品質も上がる。AIを使いこなすためには、人側も従来通り研鑽し続ける必要があるのです。

AIは決して魔法の杖ではありません。結局、何でもそうなのですが、失敗を繰り返しながら、泥臭く試行錯誤を続けることが、AI活用の近道ではないでしょうか。

完璧を求めず、日々の業務の小さな壁打ち相手としてAIに話しかけるところから始めてみてはいかがでしょうか?我々もそうでした。

「高尚な理論」も大事ですが、まずは「明日使える身近な小ネタ」を積み重ねながら、これからも泥臭くAIと向き合っていきたいと思います。

(参考)

今回の記事はCorpOpsの活用事例に閉じていますが、DeNA全社のAI活用事例については以下にまとめていますので、ご興味がある方はぜひご参照ください。

AI活用100本ノック(PDF)(DeNA)

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