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2026.05.27 技術記事

AI Day 2026 の来場者向けネットワークを構築した話

by Kohei Okazaki

#network #infrastructure #stabilization #infra-quality #infra-delivery #denaxai-day

こんにちは、IT基盤部 ネットワークグループの岡崎です。主に社内ネットワークのインフラを担当しています。

2026 年 3 月 6 日、渋谷ヒカリエホールにて「DeNA × AI Day 2026」が開催されました。DeNA が「AI オールイン」を宣言してから 1 年、「Proof.」をテーマに掲げ、あらゆる領域で AI を活用してきた成果を発信するカンファレンスです。RED・BLUE・YELLOW の 3 ステージで多数のセッションが行われ、会場はほぼ満席で立ち見が出るほどの盛況でした。イベントの詳細は インターンによるイベントレポート をご覧ください。

このイベントの会場ネットワークを、NOC チーム 7 名で構築しました。主担当 2 名で設計・準備を進め、構築作業はチーム総出で対応しています。

今回は Hewlett Packard Enterprise(HPE)様より Wi-Fi 7 対応の Juniper AP をお借りできたこともあり、800 名ほどの来場を想定したイベントで Wi-Fi 7 × 高密度環境の検証ができる貴重な機会でもありました。

この記事では、構築までの流れと、Mist AI を使ってみた所感、そしてイベント当日に取得できた Wi-Fi の接続データについて紹介します。

構築までの流れ

要件整理

まずはイベント担当者とミーティングをし、ネットワーク要件の整理からはじめました。

  • 提供範囲
    • 会場全体(ヒカリエホール A・B および廊下を含む)
  • 提供時間
    • 03/06 11:30-20:00(懇親会終了まで)
  • 提供対象
    • 主に来場者
  • 想定通信用途
    • SNS 発信がメインで、動画視聴配信等は考慮しない
  • 想定来場者数
    • 800 人ほどを想定

要件整理の結果、高密度な AP 設置が必要、配信の想定はしていないので大きな帯域は不要という方向性までは固まりました。

ミーティング・現地調査

要件が固まったあとは会場設備の把握が必要です。 ヒカリエホールは過去の TechCon で NW を構築した実績がありますが、最後の利用は 2020 年です。 残された記録も曖昧だったため、会場側担当者とのミーティング、現地調査を実施しました。

現地調査では設置された LAN コンセントや電源の位置を確認しました。 また会場ネットワークの仕様を把握するため、LAN コンセント間の通信やエリアまたぎの通信テストも実施しました。

構成の確定

要件整理、現地調査を経て最終的な構成を確定させました。

問題は機材です。 基本的に在庫を利用しますが、イベント NW 用に確保はしていないので、タイミングによっては必要な台数を確保できない場合もあります。 しかし今回は HPE 様より Juniper AP36 や EX4000 などの機材を検証用としてお借りできることになりました。 お借りした機材 + 在庫(Meraki AP + Catalyst2960 + Juniper SRX)を使い設計したレイアウト図はこちらです。

layout

レイアウト図

機材配置と合わせて LAN ケーブルの配線ルートも設計しています。 配線ルートからケーブル長を計算し購入量を算出します。 今回の見積りではざっくり 960m になりました。

事前準備

構築作業までに予め機材のキッティングや監視設定の作成は済ませておきます。 キッティングは、nwcli + Devin を使うことで比較的短時間に完了できました。 nwcli は NOC で内製開発している config 管理ツールです。Ansible をラップしており yaml で config を記述し設定投入できます。 Devin にはこの yaml を生成してもらいました。 Catalyst2960 は DHCP+TFTP で初期 config を配置できるので、ssh とシークレット設定だけ入れたものを配置し nwcli で一括投入します1

また LAN ケーブルや養生テープなどの消耗品も事前に購入しておきます。 業務の傍らで対応しており工数に余裕があるわけではないので、LAN ケーブルは自前成端はせずに 20m、40m の市販品を大人買いしました。

前日の構築作業

構築作業はイベント前日の会場設営日に実施しました。使用した機材は以下のとおりです。

種別 モデル 台数
AP Juniper AP36 9
AP Juniper AP34 2
AP Cisco Meraki MR42 10
AP Cisco Meraki MR44 1
スイッチ Juniper EX4000-12MP 3
スイッチ Cisco Catalyst WS-C2960S-24PS-L 6
FW Juniper SRX340 1組(スタック構成)

機材の運搬

機材の大部分は事前にヒカリエホールへ配送しておきました。残りの機材は当日朝に本社から運搬しています。本社のある渋谷スクランブルスクエアとヒカリエは目と鼻の先なので、台車で運ぶだけで済みました。

運ばれるEX4000

運ばれるEX4000

LAN の敷設と想定外への対応

機材が揃ったら、スイッチと AP の配置、LAN ケーブルの敷設を進めていきます。事前に設計した配線ルートに沿って作業を進めましたが、実際の会場レイアウトが想定と異なる箇所があり、配線ルートをその場で変更する必要がありました。また、防災上の都合でホールの床下に LAN ケーブルを通さなければならない箇所もあり、事前の計画どおりにはいかない場面がいくつかありました。

イベント会社の設営作業も並行して進行していたため、作業箇所が衝突して中断せざるを得ないタイミングもあり、設営の合間を縫いながら進めました。

配線作業

配線作業

構築にかかった時間

当初は 7〜8 時間を見込んでいましたが、実際にはおよそ 12 時間かかりました。会場レイアウトの変更対応や、設営作業との並行が主な要因です。事前準備で「繋げば使える」状態にしていたおかげで、NW 機器の設定作業自体はスムーズでしたが、物理的な配線作業にはどうしても現場での判断と時間が必要でした。

NOC部屋???

NOC部屋???

Juniper AP と Mist cloud の初期設定

今回、HPE 様よりイベントでの検証用に以下の機器をお借りしました。

機器 モデル 台数 備考
AP AP36 9 Wi-Fi 7(802.11be)対応、4x4 MIMO、最大約 18 Gbps
AP AP34 2 Wi-Fi 6E(802.11ax)対応、2x2 MIMO、最大約 4.2 Gbps
スイッチ EX4000-12MP 3 802.3bt(PoE++)対応、最大 60W/ポート

AP36 は Wi-Fi 7 対応のトライバンド AP で、フル機能で動作させるには 802.3bt(PoE++)による給電が必要です。そのため PoE++ に対応した EX4000-12MP もあわせてお借りしました。AP34 は Wi-Fi 6E 対応で 802.3at(PoE+)でフル機能動作するため、既存スイッチから給電できる補助的な配置としています。AP36 の 9 台は最も人が集まる RED STAGE に集中配置しました。

お借りした Juniper AP やスイッチは、Mist cloud というクラウドプラットフォームから一元管理します。機器登録は、各機器背面の QR コードをモバイルアプリでスキャンするだけで完了します。AP 11 台 + スイッチ 3 台の計 14 台をスムーズに登録できました。

設定面では、事前に Mist cloud 上で設定を作成し、機器には初期コンフィグだけを投入しておきました。現地で機器を物理的に接続すると Mist cloud から設定が自動反映される「繋げば使える」状態です。スイッチの設定は Switch Template で統一し、IP アドレス等の個別設定は CSV の一括インポートで投入しました。テンプレートによる設定統一と CSV インポートのおかげで、設定ミスのリスクを抑えつつ効率的にキッティングを進められました。

イベント当日

ここからは、イベント当日の運用状況とデータを振り返ります。

全体の概況

当日はトラブルなく運用を終えることができました。

会場全体のトラフィック総量は 約 262.6 GB(入力: 約 76.1 GB、出力: 約 186.4 GB)でした。

トラフィック推移

トラフィック推移(緑: in、黄: out)

DHCP で IP を割り振ったユニーククライアント数は 784 台、Juniper AP への接続を記録したクライアントは 728 台でした。ピーク時の同時接続数は Juniper AP 側で 228 台、Meraki AP 側で 142 台です。Mist cloud のダッシュボードでは午後にかけてクライアント数が増えていく様子が確認でき、13 時台の 173 台から 14 時台には 228 台へと約 30% 増加していました。

Wi-Fi 規格別の接続状況

Mist cloud のダッシュボードから、Wi-Fi 規格別のイベント数を取得しました。このイベント数は、接続の確立やローミング、DHCP の取得など、クライアントの接続ライフサイクルで発生する個々の動作の回数です。ユニーククライアント数ではありませんが、どの規格がどれだけ使われていたかの傾向を読み取ることができます。

規格 イベント数
802.11ax(Wi-Fi 6/6E) 30,188
802.11be(Wi-Fi 7) 18,268
802.11ac(Wi-Fi 5) 1,174
802.11n(Wi-Fi 4) 225
802.11a 6

イベントの大半が Wi-Fi 6/6E と Wi-Fi 7 に集中しており、Wi-Fi 5 以前のイベントはごくわずかでした。Wi-Fi 7(802.11be)のイベントが 18,268 件と多く発生しており、会場内に Wi-Fi 7 対応端末が相当数存在していたことがうかがえます。Wi-Fi 7 は 2024 年に IEEE 802.11be として規格が策定されたばかりですが、iPhone 16 シリーズや最新の MacBook Pro/Air など対応デバイスが増えてきており、その普及が進んでいることを実感できるデータでした。

6 GHz 帯の利用が過半数に

Mist cloud のダッシュボードでは帯域別の接続状況も確認できました。ピーク時(228 台接続時)の内訳です。

  • 6 GHz: 123 台(約 54%)
  • 5 GHz: 105 台(約 46%)

6 GHz が 5 GHz を上回りました。 イベント全体を通しても約 58% が 6 GHz で接続しており、過半数のクライアントが 6 GHz 帯を利用していたことになります。

6 GHz 帯は Wi-Fi 6E 以降で利用可能になった比較的新しい周波数帯です。既存の 5 GHz 帯と比べて干渉源が少なく、より広い帯域が利用可能です。6 GHz 対応端末がこれだけ多い環境では、クライアントが自然に 6 GHz へ分散するため、6 GHz 対応 AP を用意しておくことの意義を感じました。

まとめ

今回の AI Day 2026 では、要件整理から現地調査、設計、キッティング、構築、運用までを一貫して NOC チームで対応しました。構築作業はおよそ 12 時間と想定より長くなりましたが、当日はトラブルなく運用を終えることができました。

Mist cloud については、QR コードスキャンによる機器登録や設定の自動反映、Switch Template や CSV インポートによる効率的なキッティングなど、クラウド管理ならではの運用を体験できました。

Wi-Fi の接続データからは、Wi-Fi 7 対応端末の普及が進んでいることや、6 GHz 帯の接続が 5 GHz を上回っている状況が見えてきました。今後のイベントネットワーク構築においても、Wi-Fi 7 / 6 GHz 対応の AP を用意しておくことの重要性が増していくと感じています。

LAN ケーブル 960m、AP 22 台、スイッチ 9 台、チーム 7 名、構築 12 時間。数字にするとなかなかの規模ですが、事前準備を丁寧にやっておけばイベント当日は安心して迎えられます。この記事がイベントネットワークの構築に携わる方の参考になれば幸いです。


  1. この初期化プロセスも DHCP サーバと TFTP サーバを組み込んだ nwcli で自動化しています。 ↩︎

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