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2026.03.19 イベントレポート

DeNA × AI Day 2026 イベントレポート ── 内定者が見たAIオールインの現在地

by yuichiro kabutan naoki yamada tsubasa osaki

#ai #denaxai-day #llm #devin #internship

イベント概要

2026年3月6日、渋谷ヒカリエホールにて「DeNA × AI Day 2026 Proof.」が開催されました。DeNAが「AIオールイン」を宣言してから1年。あらゆる領域でAIを活用した効率化と創造性の両立を追求してきた"確かな成果"を示すイベントです。RED・BLUE・YELLOWの3ステージ構成で、13:00から18:00までセッションが行われ、その後にはアフターパーティーも開催されました。

本記事は、DeNAで内定者インターンをしているKabutan(26卒)、Yamada(27卒)、Osaki(27卒)の3人がお届けします。それぞれ違うセッションに参加してきたので、各視点から当日の様子をお伝えできればと思います。

会場の雰囲気

まず会場で驚いたのは、人の多さです。セッションはほぼ満席で立ち見も多く、アフターパーティーでは身動きが取れないほどの盛況ぶりで、イベントへの注目度の高さがうかがえます。

ホールの様子 通路の様子

DeNAのAI活用事例をまとめた大きなボードや、DeNAグループのAI活用を体験できるブースも出展されていて、1社単独のカンファレンスとは思えないほどの会場の熱量に圧倒されました。

AI活用事例ボード ブースの様子

オープニング

オープニングの様子

チーフオーガナイザーのIT本部 金子本部長によるオープニングでは、テーマ「Proof.」の意図、AIオールインの3本柱(全社の生産性向上・既存事業の競争力強化・新規事業の創出)、そしてトップダウンとボトムアップの両面からアプローチしてきた1年間の全体像が語られました。

📎 セッション詳細 / スライド

このオープニングを聞いたときは正直、新鮮味がないと感じました。しかしそれは内容に不足があったからではなく、語られた成果の一つ一つが、インターンとして働く中ですでに日常の風景になっていたからです。新しいAIモデルが翌日には社内で使え、ツールも短期間で利用開始される。Slackには自発的にAI活用ノウハウを共有するチャンネルがあり、エンジニアだけでなくビジネス職の方もAIを積極的に使っているのをよく見かけます。AIスキル指標「DeNA AI Readiness Score(DARS)」では全社のほとんどの組織がレベル3を達成しており、自分たちが当たり前と感じていた環境が、対外的には相当なスピードで進んでいたのだと気づかされました。

現場発の取り組みは AIジャーニーの足跡 シリーズでも紹介されているのでこちらも合わせて読んでみてください。

印象に残った登壇セッション

ここからは、3人がそれぞれ聴講したセッションの中から、特に印象に残ったものをご紹介します。

AI×開発 没入型体験施設『ワンダリア横浜』のアプリ開発

登壇者: 菊地 勇輔(ソリューション本部 アライアンス事業部 クリエイティブ技術グループ)

📎 セッション詳細

2026年春に開業予定のDeNA直営の没入型体験施設「ワンダリア横浜」の専用アプリ開発について、AIを前提としたアーキテクチャ選定と開発手法が語られたセッションでした。入社3年目にしてプロジェクトリーダーを務めているという点に、若手に大きな裁量を渡すDeNAらしさを感じます。

Androidを先に実装し、その実装をもとにDevinでiOS版を実装するという開発手法も興味深かったです。当初はFlutterで進めていたものの、オンデバイスAIの活用のためにKMP(Kotlin Multiplatform)へ移行し、ロジックを共通化したことでこのアプローチが成立しています。

私も普段の開発で、一度やったことをスキルやルールとして残し再現性を高めるという手法は取り入れていますが、それはあくまで同じコードベースの中での話です。このセッションでは、片方のOSで実装した成果物をもう片方のOSに丸ごと再現させるという、OSをまたぐレベルにまで再現性の考え方を引き上げていました。適用するレイヤーより高いものにする、その視座の差に気づかされたセッションでした。

AI×Engineering Devinと実現した変革とソリューション展開

登壇者: 佐々木 亮(DeNA AI Link Devin推進部 部長)、小池 啓輔(IT本部 IT基盤部 副部長)、河崎 航(DeSCヘルスケア製品開発統括部 プロダクト開発部 第一開発グループ)

📎 セッション詳細 / スライド

DeNAが2025年7月にAIソフトウェアエージェント「Devin」のエンタープライズ版を全社導入した、その取り組みと成果を紹介するセッションです。Devinはこのイベント全体でも存在感が大きく、会場での展示や複数のセッションで言及されていました。

DeNAでのDevinエンタープライズ版導入はすでに全社1000人規模に達しており、世界有数の活用レベルにあるそうです。セッションでは、6ヶ月想定のレガシー移行を1ヶ月で完遂させた事例などが語られましたが、特に印象的だったのは「複数AIのハイブリッド運用」という実践的なアプローチです。Devin単体で全てを解決しようとするのではなく、「並列化できるタスクはDevinに投げて80%程度の完成度まで作らせ、残りの15%を普段使いに向いているClaude Codeと人間で詰め、最後の5%を人間が仕上げる」という適材適所のパイプラインが成果を上げているとのことでした。

もう一つ印象的だった話が「Playbook」を用いた運用ルールです。現在、DeNAでは非エンジニアがシステムの仕様や障害調査にDevinを使う事例も増えています。しかしDevinは良くも悪くも自走力が高いため、少し質問しただけで勝手に実装を始めてしまうこともあります。そこで、エンジニアが事前にPlaybookでレールを敷いておくことで、想定外の挙動を防ぎ、コミュニケーションコストを劇的に削減しているとのことでした。

私は普段からコーディングなどでAIを活用していますが、基本的に個人またはエンジニアのチーム間で使用するための整備しかしないため、全社規模での導入をするとなるとここまで考えるのだという学びがありました。

さらに、Playbookを使うとコストが10分の1以下になるという話がありつつも、Playbookを使わないときのコストでも同じ仕事を人がやるよりは安いとのことでした。コードを書くだけでなく、AIが働きやすい環境を設計することの価値を実感しました。

AI×品質管理 新しいQAモデルによる生産性倍増への挑戦

登壇者: 藤﨑 隆(IT本部 品質管理部)

📎 セッション詳細

AIにテストケースを作らせると精度が34%まで落ちることもある。その課題を工程設計で解決し、テスト作成工数80%削減・精度95%修正不要まで引き上げた取り組みが語られたセッションです。

このセッションで最も刺さったのは、**「AIの精度を9割から10割にするコストより、9割の段階で人間が入るコストの方がはるかに小さい」**という割り切りです。工程を要件整理→テスト分析→テスト設計→テスト実装と細分化し、AIが各工程を90%の精度で出力したあと人間がレビューして100%にしてから次に渡す「スペシャリスト集団のリレー処理」。AIを業務に組み込もうとすると「どこまで任せてどこで人間が入るか」は誰もがぶつかる問題ですが、QAの現場でここまで実践的な構造を設計し、数値で成果を示しているのは説得力がありました。この構造は、仕様を段階的に固めていくSpec(仕様駆動)開発の進め方にも近く、工程を細かく区切って各段階で人間が精度を担保するという設計思想は、QAに限らず普段のアプリケーション開発でも意識できるものだと思います。

もう一つ印象に残ったのは、「仕様の言語化」の話です。「お風呂が沸いたら入りなさい」という一文の裏にどれだけの曖昧さが潜んでいるか――という例示から、AIに正しく仕事をさせるには仕様をどこまで明示的に書く必要があるのかが語られていました。私はTDD(テスト駆動開発)を少しやったことがある程度ですが、仕様を正確に言語化し、精度の高いテストケースに落とし込むプロセスはTDDに通じるものがあると感じました。テストコードが通るまでAIがコードを書いてくれる世界が来つつある今、「何を作るか」を正確に定義できることの価値はこれまで以上に増していくはずです。

AI×組織 シードVCから見たAI時代に少数でも勝てるチームの条件

登壇者: 立花 優斗(株式会社デライト・ベンチャーズ ベンチャー・ビルダー・ファンド)

📎 セッション詳細 / スライド

AI活用による生産性向上が当たり前になりつつある今、ツール選びやプロンプトの書き方だけでは差がつかなくなってきています。このセッションでは、VC「デライト・ベンチャーズ」での知見から、今後求められる「組織とプロセスのあり方」についての話がありました。私自身、これからの開発チームはベンチャーに限らず少人数化していくと考えているため、このセッションに興味を持ちました。

少数精鋭チームが勝つための鍵として強調されていたのは、「現場の解像度」でした。実際に現場へ赴いてヒアリングした事例として、橋梁点検の話が紹介されました。現場では、高所や膝まで水に浸かるような過酷な場所で、A3サイズの紙に点検結果を書き込むといったアナログな作業が行われていたとのことです。

こうしたアナログな課題があること自体は、現場に行かずともヒアリングだけで知ることはできたかもしれません。しかし、実際に現場へ足を運ぶことでしか得られない「その作業では何が問題で、どれほど手間がかかっているか」という体験に基づく当事者意識こそが、これからの開発で重要になるのだと思いました。

AIの進化によってシステムを「作るコスト」が極小化していくことで実装のハードルが下がり、手戻りのリスクも小さくなると、次に開発のボトルネックとなるのは「そもそも何を解決すべきか」というドメイン知識の部分です。 現場とエンジニアがやり取りをして仕様を決めるのではなく、現場の苦労を肌で知っている人間がAIを駆使し、「作りながら仕様を決めていく」アプローチが合理的になります。そこでエンジニアに求められるのが現場の課題を理解してシステムに落とし込む設計の力です。私自身、現場の課題に深く入り込み適切な設計ができるエンジニアにならなければと、モチベーションの高まるセッションでした。

AI×ゲーム LLMを"あたりまえ"に! 開発環境のエコシステム

登壇者: 大竹 悠人(ゲームサービス事業本部 開発運営統括部 第一技術部 テクノロジー推進第五グループ)

📎 セッション詳細 / スライド

「AIを使うぞと身構える必要があるのは、それはまだ道具として特別扱いしていると言えるのではないでしょうか」。ゲーム開発でLLMを"あたりまえ"にするための5つの壁を分解し、公式対応を待たずにエコシステムごと自作してしまったセッションです。

セッションでは、標準化・環境・実装・実行・知識という5つの壁それぞれに対して、独自のシステムが紹介されました。中でも驚いたのが、Firestoreを介した非同期ポーリングによりAIを含む外部からUnityの実機操作を可能にするRPCシステム「Leap」です。ドメインリロードやコンパイルで接続が切れても復帰できる設計になっていました。さらにLeapはMCPサーバーとしても振る舞えるため、Claude Codeといった既存のAIエージェントからはUnityがあたかもMCPサーバーであるかのように見え、特別なセットアップなしに直接操作できます。

しかもこのLeapが単発のツールではなく、認証や通信の複雑さを隠蔽しUnityエディター拡張や社内ツールにAI機能をすぐ組み込めるようにする独自SDK「Rinchan Client」や、コンフルエンスやSlackなどに散在する社内知識をAIが安全に参照できるナレッジハブ「Rinchan」と合わせたエコシステムとして一貫設計されています。一方で、すべてを一から自作しているわけではなく、標準化にはMicrosoft.Extensions.AI、認証にはCloud IAPといった外部サービスを適切に活用しつつ、既存の手段では埋まらない部分にだけ独自実装に踏み切っている。「現場の使命はあくまで機能開発であって、AI基盤の開発ではない」という意識のもとで手段と目的が整理されているからこそ、エコシステム全体の完成度が高いのだと感じました。実際、開発者はブラウザでGoogleログインするだけで認証が完了し、あとはClaude CodeなどからMCP経由でUnityを普通に操作できるそうです。5つの壁を突破した先には、AIがゲーム開発に"あたりまえ"に溶け込んでいる体験が待っていました。

私も個人開発でExpo(React Native)のAndroid実機開発時に、ログやエラー情報をAIに渡せず「仕方ないな」と受け入れていたので、同じ壁をエコシステムごと解決しているのを見て、とても刺激を受けましたし、これを実現する技術力の高さを感じました。ネイティブアプリや組み込みなど、Web開発ほどAIとの連携が整っていない環境で開発している人は共感できるのではないでしょうか。

発表の中で「本日Unityの公式からもちょっと出てるのでタイミングがすごい悪かった」と話していましたが、裏を返せば公式が対応する前に同等以上の仕組みを自前で構築していたということです。誰かが完璧なツールを提供してくれるのを待つ「享受者」ではなく、現場の断絶を自ら埋める「当事者」としての姿勢――ゲーム開発に限らず、AIを自分の開発環境に根づかせたいと考えている人にとって、このセッションは具体的なヒントの宝庫だと思います。内定者として、これだけの技術力と当事者意識が社内にあることが純粋に嬉しく、入社後は私もこうした姿勢で開発に向き合いたいと思えたセッションでした。

AI×開発 DeNAが挑むAIネイティブプロダクト開発

登壇者: 張本 龍司(AIイノベーション事業本部 プロダクト開発統括部 統括部長)

📎 セッション詳細 / スライド

AIイノベーション事業本部の開発責任者である張本統括部長のセッションです。開発のためのAI技術そのものではなく、一次情報の収集から開発体制・人材戦略まで、AIを取り込む組織の動き方が語られました。

特に印象的だったのは、情報収集のスピード感です。新卒1年目の社員にサンフランシスコの起業家シェアハウスに住んでもらい、現地のスタートアップコミュニティに入り込んで情報を収集しているそうです。ニュースや論文には出てこない一次情報を、表に出る前の段階で掴む体制がすでにある。さらにシリコンバレーだけでなく、DeNA Chinaを通じて中国の動向にも深く踏み込んでいました。そうした一次情報を即座に開発体制へ反映していく動き方が、DeNAのAI領域におけるスピード感を実現させていることが分かりました。

具体的には、2025年夏ごろ 話題になっていた 、AIイノベーション事業本部で企画書だけでなくプロトタイプの提出を必須とする体制に切り替えており、ビジネス職も含めてAIツールで実装を行い、動くものを見せながら意思決定しています。一次情報を掴むだけでなく、それを組織の仕組みとして即座に落とし込んでいくところまでが実践されていると感じました。

南場会長のクロージング

クロージングの様子

他のセッションが比較的フォーマルな取り組み発表だったのに対し、南場会長の登壇は最もフランクで、テックカンファレンスのキーノートのような空気がありました。ここ最近のX(Twitter)で話題になっているAIのトレンドにも解像度高く触れていて、経営のトップがここまでリアルタイムにキャッチアップしているのかという驚きがありました。

中でも3人全員が最も驚いたのが、南場会長がOpen Clawに言及したことです。内定者の自分たちはまだ社内にOpen Clawが存在していること自体を知らず、純粋に驚きました。既に社内で一部使える環境が整備されつつあり、会長自身もそれを実際に触っているというスピード感。DeNAのAIオールインが、経営トップ自身の行動で体現されていることが感じられました。

また、話のスケールにも驚きました。大企業と手を組むフェーズに入ったことの示唆や、フィジカルAIの可能性への言及など、社内の取り組みにとどまらず日本全体に向けたメッセージへと一気に広がった印象がありました。同時に、去年の発表で掲げた目標に対してまだ十分に達成できていないと正直に認める場面もあり、成果をアピールする場であえて課題を語るその姿勢に、組織としての誠実さが伝わってきました。

まとめ:内定者が感じたDeNAのAI文化

最後に、イベント全体を振り返って3人で話し合ったときに見えてきた、いくつかの共通した気づきをまとめます。

実行力と完成度。 イベントを通して最も強く感じたのは、アイデアや構想を語るだけでなく、実際に形にして成果を出しているという実行力です。AIを活用した取り組みは多くの企業が掲げていますが、ここまで多くのプロジェクトを実際に完成させ、定量的な成果として示せているのは会社としての力を感じました。QAのテスト作成工数80%削減、社内問い合わせの自己解決率44%達成、Devinによるレガシー移行の大幅短縮など、「やってみた」ではなく「定量的な成果が出た」と言い切れる事例が並んでいたのが印象的でした。

トップダウンとボトムアップの両輪。 その実行力の起点は、南場会長が「AIオールイン」を掲げたトップダウンの推進力にあると感じます。経営トップ自らが旗を振ったことで、エンジニアやPdMだけでなくビジネス職の方までが同じ方向を向く土壌ができています。しかし今回のセッションを見て強く感じたのは、そこから先はボトムアップの力で動いているということです。QAチームが独自に工程設計を組み上げたり、ゲーム開発チームが公式対応を待たずにエコシステムを自作したり、現場が自発的に課題を見つけて解決まで持っていく動きがあちこちで起きていました。現場のAI活用事例をエンジニア職・ビジネス職・クリエイター職から集めた AI活用100本ノック も、ボトムアップを象徴する取り組みだと思います。AI Dayはテックカンファレンスというよりも「会社全体の発表」としての色彩が強い場で、HR、ゲーム、スポーツ、QA、新規事業など多岐にわたる領域から登壇がありましたが、それぞれが「言われたからやった」ではなく、現場の当事者意識から生まれた取り組みだったのが印象的でした。

注目度と対外発信の巧みさ。 とにかく参加者が多かったです。セッションは基本的に立ち見が出ていて、人気のセッションでは入場制限がかかるほどでした。1社単独のカンファレンスでこれだけの集客力があることに驚きましたが、それは取り組み自体だけでなく、対外発信のうまさにも支えられていると感じます。イベント自体の演出や構成はもちろん、登壇セッションのYouTube公開、エンジニアブログでの継続的な発信、SNSでの拡散など、社内の取り組みを社外に届ける力がDeNAにはあると感じました。

複数のセッションを横断して見えてきたのは、DeNAの「AIオールイン」が掛け声で終わらず、個々のチームや業務に実際に根づき、定量的な成果として実を結びつつあるということです。一方で、南場会長が去年の目標に対する未達を正直に語っていたように、成果に満足して立ち止まるのではなく、まだまだ挑戦者として走り続ける姿勢も感じられました。新しいことが常に正しいわけではありませんが、AIの進化が週間単位で進んでいく今の時代において、変化を恐れず素早く適応していく力はDeNAの大きな強みだと感じます。内定者の自分たちにとって、この環境で働けることへの期待がさらに高まるイベントでした。

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