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2026.01.15 技術記事

ツール導入時における法務確認のリードタイム削減

by Yuki Narita

#llm #ai #corporate-it

はじめに

こんにちは、IT本部IT戦略部テクニカルオペレーショングループの成田です。 DeNAグループにおけるITツールやシステムの運用管理、改善業務を担当しています。

本記事では、SaaS などのサービスを社内に導入する際に必要となる法務確認のリードタイム削減を目的として行った施策についてご紹介します。

ツール利用申請による法務確認

DeNAグループでは、SaaS などのクラウドサービスやインストール型ソフトウェアといった各種ツールの導入時に、ツール利用申請というkintoneアプリで申請を受け付けており、このプロセスの中でセキュリティ部門や法務部門などによるリスク確認を実施しています。

中でも、法務部門による法務確認プロセスは、ツール毎の利用規約内容の確認に加え、利用用途やツール上で取り扱う情報などのユースケースについて事業部へのヒアリングを行った上で、専門知識を持つ担当者が法的な整理を行う重要な工程です。この厳格なプロセスを踏むことで、リスク発生の可能性を大きく低減できています。

しかしながら、この法務確認プロセスは、法務部門と事業部間の密な連携や、多岐にわたる情報の精査・判断のために多くの時間を要しており、ツール利用申請全体の待ち時間のうち約8割を占めるという課題を抱えていました。

そこで、DeNAグループのビジネススピードをさらに加速させるために、この法務確認作業を効率化し、申請から利用開始までのリードタイムを削減できないかを検討しました。

現状整理と課題分析

まず、法務部門の担当者にヒアリングを実施し、作業に時間を要している主な要因として、以下のような課題があることが分かりました。

  1. ツールの利用規約を確認することに時間がかかる

    • 利用規約の文章量が非常に多く、リスクチェックを目視で行うために多くの時間を要す
  2. 事業部へのヒアリングや情報整理に時間がかかる

    • 申請時に事業部から提供される情報が不十分、あるいは分かりづらいケースがあり、事業部への追加ヒアリングと情報の整理に時間を費す

施策の検討

課題分析の結果に基づき、以下の施策を検討しました。

1. LLMによるツール利用規約チェック

ツール利用規約について、これまで法務担当者が目視で行っていた確認作業を、LLM(大規模言語モデル)に行わせる仕組みを検討しました。

新しい法務確認フローは、以下の通りです。

  1. kintoneアプリで申請

  2. LLM がツール利用規約をチェックし、サマリを作成

  3. 利用ケースのリスク度合いの判定

    • 類型的にリスクの低いツールかを当社の基準に基づいて判定する
  4. 申請者所属部門のツール利用承認者にてLLMチェック結果のサマリを確認

    • 類型的にリスクの低いツールについては、承認者の承認のみで利用開始
    • 懸念等があれば法務担当者(人)へエスカレーション

この仕組みにより、これまで時間を要していた利用規約の確認の一部を LLM に任せ、特定ケースの場合は今まで通り、法務担当者(人)にエスカレーションすることで法務部門の工数を削減します。

なお、LLMについては、入力データが学習に利用されないセキュアな環境を利用しています。また、法務担当者でプロンプトを適宜チューニングし、継続的に精度を改善していける仕様としました。

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※説明の便宜上、一部の判定条件を簡略化しています。

2. kintoneフォームの入力項目整理

先ほど紹介した法務確認フローにおいて、法務担当者(人)による確認が必要となるケースでは、事業部門へのヒアリング工数が大きな負担となります。

そこで、このヒアリング工数を削減するため、kintoneフォームの質問項目を整理し、事前に必要な情報が整理された状態で法務担当者にプロセスが回るフローを検討しました。

そのために、まずは法務観点でのリスクチェックを行う際に、これまで法務部門から事業部門へヒアリングしていた内容について、フロー図として整理しました。

それから、フロー図における各質問項目をkintoneフォームのフィールドとして設定した上で、Javascript により各フィールドの表示・非表示や入力可否の設定などの制御を行い、フローの分岐に沿ったヒアリングをフォーム上で実現しました。

ツール利用申請のリニューアル

今までは「ツール利用申請」が完了した後、「購買・ライセンス付与申請」という別のkintoneアプリでツールの調達を対応していました。

上述の新機能実装と併せ、利用者の利便性向上のため、これらの既存kintoneアプリを統合し、「ツール利用・購買申請」としてリニューアルしました。これにより、ユーザーは複数のkintoneアプリを行き来することなく、1つのkintoneアプリでツール利用の申請から調達までを完結できるようになります。

成果と今後の課題

リードタイム削減効果

新kintoneアプリのリリース後1ヵ月間において、申請から利用開始となるまでの総待ち時間と、法務確認に関連した作業のみの待ち時間を、それぞれリリース前と比較した結果は以下の通りでした。

計測期間 総待ち時間 法務確認待ち時間
ツール利用申請(旧) 2025/09/01~2025/09/30 21,306時間 17,695時間
ツール利用・購買申請(新) 2025/10/1~2025/10/31 5,210時間 1,530時間
→76%削減 →91%削減

大幅な工数削減ができた要因としては、施策1.で述べた通り、リスクの低いケースにおいて、これまで人による法務確認が行われていたところを、「LLMチェック+事業部のツール利用承認者による承認」へ置き換えたためです。

実際に新kintoneアプリでは、計測期間における申請のおよそ半数の30件が上記の条件に該当し、LLMによるリスク確認の対象となっています。

また、そのうち3件は申請部門から法務担当者(人)へのエスカレーションが必要となりましたが、それ以外の27件はLLMによるチェックのみで法務確認を完了しています。

法務担当者(人)による確認 LLMによるリスク確認 LLMによるリスク確認+法務担当者(人)へのエスカレーション
ツール利用申請(旧) 70件
ツール利用・購買申請(新) 29件 27件 3件

さらに、法務担当者(人)による確認が必要となったケースについても、以下の通り、1件あたりの待ち時間を約半分に削減できていることから、施策2.についても十分に効果があったものと考察できます。

法務担当者(人)による確認の待ち時間(1件あたり)
ツール利用申請(旧) 88時間
ツール利用・購買申請(新) 45時間
→49%削減

今後の課題

LLMチェックについて、現時点では申請対応者(人)が申請されたkintoneレコードのデータを専用の WebUI に入力し、出力結果をkintoneレコードに手動入力するという作業を行っています。そのため、API連携によりこの作業を自動化することで、申請対応者の工数を削減することを検討しています。

また、ツール利用・購買申請は、DeNAグループで過去にリスク確認を実施したツールの情報を一元管理している別のkintoneアプリ「ツールマスタ」と連携していますが、このツールマスタについて、ツール利用・購買申請との親和性をより高めるために仕様を見直すことを検討しています。

まとめ

本記事では、ツールを社内導入する際に必要となる法務確認のリードタイム削減を目的とした施策の内容について紹介しました。

今回ご紹介した施策の実施により、以下のような全社メリットを創出できました。

  • ツール利用申請から利用開始までのリードタイム削減
  • 法務担当者の工数削減
  • 利用者のユーザビリティの向上

本記事でご紹介した取り組みが、皆さまの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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