はじめに
こんにちは!2025年にエンジニアとして入社したとりちゃんです!
この記事では、DeNAの新卒エンジニア研修で経験したことを新入社員のありのままの目線で紹介いたします!
今年度のDeNAの新卒エンジニア研修では、6人1組でチームを組み、与えられたテーマに基づき、スクラム開発のフレームワークを用いてプロダクトを開発するという実践的な形式で行われました。新卒エンジニアである私たち自身が、開発者、スクラムマスター、そしてプロダクトオーナーの役割を担います。私、とりちゃんはより良いプロダクトにするために何を作るかを大事にしたかったため、「プロダクトの価値最大化」に責任を持つプロダクトオーナー役に挑戦しました。
本記事では、新卒研修でAIプロダクトの開発に挑戦した経験をもとに、私たちがどのようにアジャイル開発を爆速で回し、数度のピボットを経ながら価値最大化に向き合ってきたのかを紹介します。特に、その過程でAIをどのように活用したのか、そして新卒である私たちがDeNAでどのような挑戦の場に身を置けたのかについて、実体験を交えてお伝えします。
DeNAに興味があり、入社後にどんな挑戦ができるのか知りたい方や、ご自身の価値観がDeNAの文化と合うのか気になる方にとって、本記事が「新卒の挑戦と成長のリアル」「AI活用の面白さ」「価値最大化へのコミットメント」を感じていただく一助になれば幸いです。
新卒研修での挑戦:AIプロダクトで新卒の成長を最大化する
新卒研修では、与えられたテーマ一覧の中から各チームごとに取り組むテーマを一つ選択します。それらのテーマ一覧は、社内で実際に解決して欲しいと声が上がっているものの中から選定されています。取り組みテーマにおける課題を深掘りし、実際に社内で役に立つプロダクトを開発するのが新卒研修の目的になります。その中で私たちのチームが取り組んだテーマは、「新卒の成長を最大化するAIプロダクトを開発すること」でした。壮大なテーマにワクワクする一方で、何度も壁にぶつかりました。
一言で「成長を最大化する」といっても、課題は人や状況によって様々です。新卒の成長を取り巻く課題を模索する中で、大小様々な課題が散在することがわかりました。
-
インパクトは大きいが、実現が極めて困難な課題
-
強いペイン(解決したい悩み)を持つ人はいるが、対象が限定的でインパクトが小さい課題
これらの中で、私たちはどの課題を解決すれば最もインパクトを生み出せるのか、その選択に多くの時間を費やしました。何度もヒアリングを重ね、本当に求められているものは何かを探索し続けました。
ピボットで追い求めた価値最大化
2ヶ月という短い開発期間で、私たちはプロダクトの価値を最大化するために、実に4回もの大幅な方向転換(ピボット)を繰り返すことになりました。この2ヶ月の中で発生したピボットを図示したものが以下の通りです。
動き始めた当初は、①の1on1の活用に課題が見えていたため当初は1on1周りの育成課題に着目していました。しかし、新卒へのヒアリングを重ねていくうちに、②の日報の活用という観点の方が課題として大きく、より強く求められていることがわかってきました。そこで、②の日報の活用支援の方向性でプロダクトを進めるように方針転換しました。しかし、新卒のみでなく1つ上の先輩である24卒や、新卒育成担当の人事や副本部長の方々へヒアリングを重ねるうちに、研修中の新卒と現場に配属された後の新卒とでは本当に求めていることとの間に大きなギャップがあることに気づかされました。だんだんと明確になってきたのは、現在の方向性のプロダクトが研修後には多くの人に必要とされないということでした。
そこで、配属後に人事が求めていることと、24卒の方がそれに沿った行動を取る上で妨げとなっている課題を特定することを目的として、改めて対象者へヒアリングを行いました。これを繰り返し、より成長に寄与しているという意義を感じられるプロダクトに振り切った③の学びの蓄積支援や、より負担が少ない状態でも本質的なフィードバックが得られるように振り切った④の低負担な学び支援など、アジャイルに試行錯誤をしていました。
この試行錯誤を繰り返し最終的には分かったのはそれぞれの方が求めているものが大きく異なり、最初から多くの人が求めているものを実現するのは実現可能性がかなり低いということでした。そこで「全員」に向けたプロダクトではなく、「すでに強い課題感を持ち、自ら行動している人」に深く刺さるものを作るべきだという方向転換を最後に行いました。この方向転換を決定するうえで重要な役割を果たした気づきは、一部の成長意欲が高い新卒は既存の対話型AIツールを使いながら振り返りを行っているということでした。一方でそのAIツールに対して「抽象的なアドバイスしかもらえない」「自分に最適化されていない」という不満を抱えていました。そこで、「個別最適化されたフィードバックが欲しい」という実際に強く求められているニーズに着目をしました。現在、AIツールによる振り返りはまだ一般的ではありませんが、、今後はこれまでの成長の軌跡をすべて考慮してフィードバックできるというAIの強みを活かしていく時代になることは容易に想像がつきます。まずは熱意を持っているアーリーアダプターとなる人が求めているものを作り、そこからより多くの人に広げていく戦略に切り替えていきました。
こうした試行錯誤の末に生まれたのが、AIチャットサービス「Frica」です。Fricaは、日々の行動記録を参照することで、一人ひとりに最適化された経験学習に基づく具体的なフィードバックを返します。
図のように、個別最適化されたチャットができるだけでなく、より成長を加速させる仕組みとして経験学習を最大限活かせるようにAIメンターがサポートをしてくれる機能を加えました。AIメンターがユーザーの課題を記憶して解決するまで追跡し、解決した後も類似の課題でつまづいている時にこれまでに学んだことを思い出すように促し、学びを着実なものにすることを支援します。
これによって、使えば使うほどAIの応答がパーソナライズされ、ユーザーの成長を加速させるという、成長の好循環を生み出すサービスとなりました。
AI活用が支えた「爆速」アジャイル開発
この激しいピボットを繰り返しながらも開発を前に進められたのは、AIを開発プロセスのあらゆる側面に導入し、アジャイルを効率化したからにほかなりません。AI オールインを宣言しているDeNA で私たちは、その恩恵を最大限に受けられました。その中でも特にインパクトの大きかったものを3つ紹介します。
一つ目は、AIを活用したコミュニケーションコストの削減です。ピボットをすると、ピボット後のイメージを共有するためにコミュニケーションコストが増大します。そこで新卒研修で利用可能であったAI 搭載エディタ Cursorを利用し、完成イメージをチーム内で高速かつ視覚的に共有するようにしました。
例えば、これらの図は、ピボットが決定した直後に共有した図の一例です。Cursorによって画像データではなくHTML/CSSを出力しているため、自分が想像している画面遷移も同時に表現することができ、素早く全体のイメージを共有することができました。このように視覚的にすぐに理解できるイメージを共有することで、より本質的な議論や設計にかけられる時間を増やしていきました。
二つ目は、情報共有と整理の効率化です。ミーティングやヒアリングをGoogle Meetで行うようにし、文字起こしと要約機能を使うことで自動的にドキュメント化するようにしました。ドキュメント化された複数のヒアリング議事録などはAIのチャットツールであるNotebookLMを活用して今後の課題の整理・抽出に活用し、より良い意思決定ができるように環境を整えました。
三つ目は、開発サイクルの高速化です。コーディングにおいてはCursor、コードレビューにおいてはPR Agentを導入することで、効率的な開発を実現できました。ここで紹介した以外にも、随所でAIをフル活用することで、私たちは価値最大化に向けたピボットを乗り越えることができました。
挑戦を後押しするDeNAの文化
最終的に完成したプロダクト「Frica」は、多くの社員の方々から貴重なフィードバックをいただくことができました。「キャリア理論などで推奨されるやり方のコーチングのメソッドが再現されていてすごい」 「(AIに)いい感じのTry(次の挑戦アクション)を生成されてしまって悔しい(笑)」 「習慣化のためにリマインドしてくれるから続けられそう」といった意見をいただくことができました。
このようなプロダクトを新卒研修という短い期間で形にできた背景には、DeNAのカルチャーが大きく影響しています。
新卒の挑戦に快く協力してくださる文化やAI導入に積極的な文化がなければ、ここまで進めることができませんでした。DeNAには、役職や年次に関わらず、誰もがフラットに協力し、新卒でも本気で挑戦をさせてくれる文化が根付いています。今回の研修中でも必要なAIツールをすぐに整備してもらえる環境が整っていました。さらに、副本部長の方もカレンダーに予定が詰まっている中、ヒアリングに応じてくださいました。
おわりに
新卒研修でのAIプロダクト開発は、決して平坦な道のりではありませんでした。しかし、価値の最大化という目標に向かってチームでピボットを繰り返しながらプロダクトをリリースし、ポジティブな評価をいただくことができました!
この記事を通して、変化を恐れずにプロダクトの価値を追求する姿勢や、新卒でも裁量を持って大きな挑戦ができる環境がDeNAにあることを感じていただけたなら幸いです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
この記事をシェアしていただける方はこちらからお願いします。