はじめに
今年度、DeNA では最重要テーマとして「AI」を掲げ、全社を挙げてその活用を推進しています。全社で挑むAI戦略 「AIオールイン」 を宣言し、オールDeNAで活動することが重要とされています。
また、DeNA品質管理部(以降、品管と記載)の部門ミッションは、QCD(Quality, Cost, Delivery)の鼎立を掲げており、それを達成するために、AI活用によりQA業務の生産性2倍を目標に掲げ、AIネイティブ化と生産性向上を目指して活動していますので、その取り組みをご紹介いたします。
DeNA品管の取り組み
新たな部門方針
品管では新たな部門方針として 「AIで品質を高度化する」 を掲げ、「AIを活用してソフトウェア検証プロセスを効率化し、コスト最適化しながら高品質なサービスを提供する」という組織的な意思表示を行っています。これにより、品管メンバー一人ひとりがAI活用自体を個人の目標設定でも掲げることができる状況を作ってきました。
AI化戦略
組織としては、AIを身近に感じ議論ができる場を提供することから始めました。AI活用を推進する特別チームを作りAI化に向けて推進役を担ってもらいます。その一環として、私たちは以下のような部門全体でAI活用の事例を「共有する場」を設けました。
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専用 Slack チャンネル: 実際の検証現場でのAI活用事例(例:Notebook LM で仕様書を読み込ませ、テスト観点の漏れが見つかった事例)を日々収集・共有しています
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月次部門会議: Slack で集まった事例の中から効果が高いものをピックアップし、ベストプラクティスとしてプレゼンしてもらい、部門全体の「標準スキル」へ高めています
ただし、生産性2倍という高い目標に対しては、前述した取り組みだけでは達成できません。品管の業務を分析してみると、多くのQA業務のうちテスト設計とテスト実行に多大な工数を使っていることが分かるため、この作業をAI活用することで生産性が向上する見込みが立ちました。
図:DeNA品管のある2PJのQA活動の工数割合
テスト業務のAI化を実現するために、組織としてしっかり開発費を予算に組み込むことで、AI開発プロジェクトを始動させました。品管メンバー自らが当事者としてツール開発を行い、生産性向上に有効なQA特化型ツール「DAAQ」(読み方:だっく DeNA AI Advanced Qualityの略)の開発を行っています。
AIスキルを評価する指標導入
全社的な指標
AIオールインを進めている最中、DeNA では従業員と組織のAI活用レベルを可視化し、よりAIネイティブな組織へ向けて、全社のAIスキルを評価する指標 「DeNA AI Readiness Score(DARS)」 を導入開始しました。
従業員一人ひとりのAI活用レベルを測る「個人レベル」と、部署・チーム単位のAI活用レベルを測る「組織レベル」の2つの側面で構成し、半期の評価サイクルごとに可視化し、目標設定を行っていきます。
品管の指標
全社的な指標は定義されましたが、開発者と非開発者の定義となっているため、品管メンバーが具体的に目標を掲げるには難しく感じてしまいます。そのため、全社的な「DARS」の指標を参考に、品管独自で指標を掲げることにしました。
幸い品管としては、すでにQA特化型ツール「DAAQ」の開発を進めていたため、ツールを品管メンバー全員で成長させていきたいという思いがありました。また、今後はさらに「DAAQ」をより良いものにアップデートしながら、自身のAIレベルの向上もできることが望ましいと考えています。
そのために、会社で定められたAIレベルの定義である「DARS」を部門最適化し、「品管版DARS」として再定義を行いました。
図:品管版DARSの定義
最終的に品管が目指す「品管版DARS レベル5」の姿は、「DAAQを使いこなしQAプロセスや開発プロセスに戦略的展開ができる」を目指していきます。さらにはツール自体の拡張も自らが検討できることも目指していき、部門全員で「DAAQ」を中心としたAIネイティブな組織への変革を加速することを目指しています。
DAAQが中心となる戦略
「品管版DARS」を導入したおかげで、品管メンバーが自らのQA業務で「DAAQ」を活用し効率化を行うことが成果になるため、個人の目標設定にも組み込まれるようになりました。
さらには、ツールを皆で育てていく思いも生まれ、今ではテスト設計、実行に特化したツールでなく、仕様書の不備検出、倫理・校正・ガイドライン違反が無いかの検証も行えるツールとして日々成長していっています。現在、各事業ドメインに特化したツールも開発中です。
このように私たちは、自分たちで開発した「DAAQ」を中心にしていくことで、おのずとAIレベルも向上して行くフライホイールな仕組みを作り、品管メンバーが負担なくAI活用ができる環境を整備しました。これが品管のAI化戦略となります。
さいごに
AI化に向けて DeNA 品管での取り組みや今後目指す戦略を紹介しました。各企業様でもAI活用や社内への浸透の仕方を試行錯誤している段階だと思います。今回紹介いたしました事例が参考になれば幸いです。
さらには、試行錯誤して考えたAI化戦略のノウハウも展開していきたいビジョンもありますのでお気軽にお問い合わせください。今後は、掲げたAI化戦略の浸透状況や苦労話なども発信していきたいと思いますので、ご期待ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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