はじめに
こんにちは、 ライブコミュニティ事業本部 Pococha 事業部バーティカルシステム部第一グループ所属の Kim Minguk(レイ) です。
今回はDeNAの国際学会派遣制度1を活用して、韓国で開催されたApple Developerカンファレンス「KWDC252」に登壇してきました。
KWDC25について
KWDCは韓国最大級の Apple Developer カンファレンスで、エンジニア・デザイナー・QAなど、Appleプラットフォームに関わる多様な職種の人々が集まるコミュニティです。3
今回のKWDC25では全13セッションが行われ、韓国、日本、カナダなど複数の国から14人の登壇者が集まりました。国際色豊かで、会場の熱気や交流の濃さを強く感じるイベントでした。
登壇のきっかけ
今年6月のWWDC25に参加した際、KWDCのオーガナイザーから「Metalについて話してみない?」と声をかけてもらったことが始まりでした。
MetalはAppleのGPUを直接活用するためのフレームワークですが、一般的に共有されている情報はシェーダー言語(MSL)に関するものが大半で、パイプライン全体の理解や設計に関する情報は非常に少ないのが現状です。
私は日頃から「Metalの本質はパイプラインにある」と考えていたため、この機会にぜひ共有したいと思い、登壇を決意しました。
登壇内容:「No Shaders? No Worries. Let’s Talk Metal Pipeline.」
私の登壇テーマは
「No Shaders? No Worries. Let’s Talk Metal Pipeline.」
でした。
内容としては、シェーダーの話は最小限に抑え、以下のような観点でMetalを紹介しました。
- Metal とは何か、そしてなぜ使うのか
- Metalを活用しているアプリの事例
- GPUの動作フローとAppleプラットフォームにおけるパイプラインの仕組み
- 実際のアプリケーション例とパフォーマンス改善のアプローチ
シェーダーはHLSLなど他の言語からMSLに比較的容易に移植できますし、Claude CodeやGPTなどのAIツールを活用すればコード変換も簡単に行えます。そのため今回はあえてシェーダーの細部には踏み込まず、パイプラインの全体像にフォーカスしました。
さらに、Metalをまったく触ったことがない初心者から、ある程度経験のあるエンジニアまで学びを得られるようにセッションを設計しました。具体的にはアプリでの利用事例、パイプラインの流れ、シンプルなコード例に加えて、パフォーマンスを考慮した設計の工夫まで紹介しました。結果的に多くの参加者からポジティブなフィードバックをいただきました。
Metalパイプラインの流れを視覚的に説明
想像以上の反応
普段あまり扱われないテーマだったため、反応があるか少し不安もあったのですが、想像以上に多くの方に興味を持っていただき、大変盛り上がりました。 (なんとQ&Aは合計で約4時間にも及びました。)
記憶に残っている質問の一部を挙げると
- ある施策を開発する際にMetalを採用すべきかどうかの判断基準
- 複数の配信者が同時に配信するライブストリーミングでのMetal活用方法
- Metalエンジニアの採用やチームでの運用方法
さらに具体的な技術的質問としては
- Compute / Blit / Renderの処理をどの場面で使い分けるべきか
- CPUとGPU間でのリソース処理・ハンドリングの最適化
- Tiled renderingと単一テクスチャ利用の判断基準
など、現場に直結した深い議論が展開されました。
Ask to Speaker
学びと苦労
セッションの準備にあたっては「Metalというテーマで、どうすれば幅広い参加者に価値を届けられるか」という点に多くの時間をかけました。
韓国におけるMetalの利用状況を調査する中で、Metalは単にエンジニアだけが判断する技術ではなく、ビジネス的な観点やデザイン・採用戦略など、多様な領域での検討が必要な技術だと再認識しました。
KWDCにはエンジニアだけでなく企画職やデザイナーも多く参加していたため、「誰にとっても学びがある内容にすること」を意識したことが、今回の一番の学びであり、苦労でもありました。
また、海外のカンファレンスという場を通じて、各国の開発知識やアイデア、開発コミュニティの在り方について多くの刺激を受けました。特に、Pocochaと同じようにライブストリーミング領域で開発をしている韓国のエンジニアの方々と意見交換ができたのは大変貴重でした。
Metal 未経験者にも活用方法を分かりやすく伝えるために用意したスライド
さいごに
今回のKWDC25への登壇は、私にとって大きな挑戦であり、成長の機会となりました。 知識を発信するだけでなく、さまざまな環境・バックグラウンドを持つ人々と議論することで、新しい視点や学びを得られたことは大きな財産です。
この経験を活かし、今後は担当しているプロダクトへの貢献はもちろん、機会があれば積極的に知見を発信していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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