はじめに
こんにちは、IT戦略部 コーポレートオペレーショングループの一戸です。
IT戦略部という名称は一般的ではないかもしれませんが、いわゆる情シスです。今回は、私が所属するIT戦略部 コーポレートオペレーショングループの業務内容を紹介しつつ、これからの情シスの在り方を少しだけ考察してみたいと思います。
コーポレートオペレーショングループのミッション
主要なミッションは、経理、経営企画、人事といったコーポレート部門の業務システムの運用保守です。大小合わせて30弱のシステムがあり、これらのシステムはDeNA本社だけでなくグループ会社とも共有しているため、非常に多くのステークホルダーが関わります。
運用保守の他にも、ステークホルダーからの要望を取りまとめて、業務改善として既存システム改修も行っています。DeNAの社内システムの多くは内製です。そのため、要望に対して迅速かつ柔軟な対応が可能となっています。必要に応じて新システムの開発も行います。
既存システムの改修、新システム開発いずれの場合であっても、要件定義・基本設計といった上流工程は私たちが担当し、詳細設計・製造以降の下流工程は開発グループに依頼する形を取っています。
内製をせずパッケージを購入する場合もあります。その際は、企画・検討から効果試算、製品選定、導入プロジェクトの立ち上げ・推進、ベンダーマネジメントまで、全工程を私たちが担当します。
これらの業務を8名体制で回しています。
超上流まで踏み込むDeNAの情シス
既存システム改修、新システム開発、パッケージ導入、いずれの場合も、業務プロセスの見直しを伴うことが多いです。規模が大きい案件は、 BPR(業務改革) による抜本的な業務プロセスの再構築が必要になってきます。
コーポレートオペレーショングループは、そのBPRをリードする役割も担っています。私がこれまで抱いていた情シスのイメージは
- 業務部門がBPRをリードし、上流工程を担う。情シスはサポート、下流工程を担う。…従来型の情シス
というものでしたが、コーポレートオペレーショングループは違っていました。上流から下流の全工程を主戦場とし、案件によっては 超上流工程 から担当します。
RPAやAIの導入、セキュリティ対応のような技術的な側面が強い案件であれば情シスがリードするのは自然だと思うのですが、業務領域のBPRを情シスが超上流からリードすることは珍しい気がします。
BPRは業務部門と情シスのどちらがリードすべきか
前述の通り、私が抱いていた一般的な情シスのイメージと、DeNAの情シスの仕事の仕方にはギャップがありました。このギャップに気づいたことをきっかけに「BPRは業務部門と情シスのどちらがリードすべきか」について改めて考えを整理したいと思い、いま世の中の見解はどうなっているのかを調査してみることにしました。調査にはChatGPT、Gemini、Grokなどの生成AIのDeep Researchを活用しました。
調査の結果、BPRの定石としては、
- 業務部門がリードし、情シスが伴走する形が最適である
という結論が得られました。エビデンスとなった記事や資料を見てみると、
- BPRはビジネス成果を目的とした組織変革である
- IT部門だけでは事業戦略やオペレーションの現場感覚を十分に把握しきれない
- よって現場感覚を持つ業務部門がリードするのが効果的
という趣旨の情報が多かったため、この結論となったようです。確かにこれがあるべき姿なのかもしれません。
なぜDeNAは情シスがBPRをリードするのか
ではなぜ、DeNAでは定石ではない「情シスがBPRをリードする」方法を取るのでしょうか。
それは世の中の定石やあるべき論をなぞるようなアプローチではなく、自分たちなりの最適解を追求した結果たどり着いたのだと思います。コーポレートオペレーショングループがBPRをリードできる理由を掘り下げると、なぜそのような解にたどり着いたかが少し見えてきます。
理由① 業務全体を横断的に見渡せる立ち位置
個社・個別部門の担当者の立場からは、グループ全体の業務を俯瞰することは難しく、どうしてもソリューションは個別最適になりがちです。コーポレートオペレーショングループはグループ全体を守備範囲としていますので、コーポレート業務を横断的に見渡せる立ち位置にあります。全体を俯瞰し、グループ会社間の業務差異や共通部分を横串の視点をもって見つけ、全体最適なソリューションを提案することができます。
理由② BPRに必要なマインドとスキルを持った人材
情シスなのでITスキルのキャッチアップを怠らないのは当然のこととして、コーポレートオペレーショングループでは業務ファーストのマインドが浸透しており、業務知識のキャッチアップも重要視しています。そうして得られる IT×業務 のクロステックスキルが、ITと業務のバランスが取れたソリューションを考案するために必要な要素であり、これを持った人材がいるコーポレートオペレーショングループだからこそBPRをリードできるのだと考えます。
理由③ 「ことに向かう」カルチャー
DeNAには 「こと」に向かう という価値観があります。「本質的な価値を提供することに集中する」という趣旨ですが、これがカルチャーとして全社に浸透しています。
やるべきことであれば、そこに全員で向きを揃えて、全力で向かう。例えば、M&Aに伴う子会社の会計システム統合やインボイス制度対応など、本来は経理リードで進めるような案件をIT戦略がリードしても、それが今の最適解であればそうする。それに対して異論・反論は出ません。
多くの企業は、理想は 「業務部門がリード」 と分かっていても、現実的には困難な場合が多いのではないでしょうか。
- 業務部門は日常業務に追われ、新たなプロジェクトやグループ会社の業務把握にリソースを割く余裕がない
- 業務部門にBPRスキルを持つ人材がいない
業務部門だけでこれらの問題を解決するのは非常に難しいです。そうなると、他の出来る組織を頼るような選択肢になってくると思います。(理由①②)
また、業務部門と情シスの間に対立があるという企業は少なくないと思います。DeNAではそれはありません。(理由③)
「BPRは必ず業務部門がリードすべし」というルールはどこにも存在しません。目的が達成できるなら、誰がやってもよい。なら、やれる土壌のあるIT戦略がやる。シンプルに、それだけのことなのかもしれません。
最後に
AIの台頭によって、ますます変化の激しい時代になることは間違いありません。運用保守に終始し、業務部門から要件が降りてくるのを待っているような従来型の情シスでは太刀打ちできないでしょう。このスピードに追いつき、ビジネスで成果を出し続けるためには、技術と業務の垣根を超え、変革そのものをリードできる力が必要です。全社横断的な立ち位置やスキルセットを得やすい情シスこそが、その変革のリーダーになれる可能性があるのではないでしょうか。
DeNAはこれからAIにオールインし、変革していこうとしています。おそらく多くの困難があると思いますが、そんな道のりも楽しみながら、私たちコーポレートオペレーショングループは、変革の推進者としてリーダーシップを発揮し、新しい情シスの在り方を模索しながら、新たな価値を創造していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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