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DeNAのエンジニアが考えていることや、担当しているサービスについて情報発信しています

2024.09.19 カルチャー・環境

DeNA 社内IT事情 - ユーザー満足度と費用対効果の両立

by Yuko Morishima

#情シス

はじめに

こんにちは、IT戦略部の森嶋です。私が所属しているIT戦略部は、DeNAグループの社内ITを統括する情報システム部門になります。私はこれまで製造業2社の情報システム部門を経験した後、DeNAのIT戦略部にJoinしました。

今回はDeNAの社内ITの紹介と現在注力している内容について記事を書いていきたいと思います。

このテーマを選んだ理由は3つあります。

  • 入社前に、IT企業の情報システム部門がどのようになっているのかに興味があったため
  • 転職後のミスマッチ防止のため組織の体制を把握した上で選考を受けていた
  • 企業の情報システム部門を紹介する情報が少ないと感じていたため

上記の理由のうち1つでも共感した方は、ご一読いただければ幸いです。

DeNA IT戦略部概要

現在のIT戦略部のミッションは「DeNA グループの IT 投資対効果を最大化する」としています。このミッションを実現するため、IT戦略部では約50名のメンバーが5つのグループに分かれ、DeNAの社内ITを最適化する取り組みを行っています。

大きな特徴として、外部委託は一切せずにすべて社内のメンバーだけで業務を回している点が挙げられます。この体制はコストや人材育成に時間がかかるというイメージがあるかもしれませんが、それ以上のメリットを感じています。

  • ユーザーに提供するサービスの「質」が向上する
  • コストに対する耐性が上がる

これらの具体的な事例について詳細をご紹介したいと思います。

各グループの成果と強み

システム開発グループ

内製システム構築やパッケージのアドオン開発/運用などを行っているグループになります。

DeNAの社内システムの大きな特徴は、QCDのバランスを追求した内製開発です。

現在、多くの企業で開発コストや導入期間を踏まえてSaaS製品を導入し、システムに業務を合わせるというのが主流です。しかし毎月の利用料が高額であったり、Saas製品の仕様上業務に必要なカスタマイズができないこともあり、製品を導入しても期待していたような効果が得られないこともあります。

これらのリスクを回避し、費用対効果の高い社内システムを実現するために、DeNAのIT戦略部はSaaS製品と内製開発を組み合わせた社内ITを提供しています。この環境によって先述したメリットの他に、エンジニアにとっては多くの成長機会があることが利点として挙げられます。

例えばある程度成熟した企業では、大きなプロジェクトがない限り開発する機会は軽微なバグ修正といった小規模なものが多くなる経験があります。 しかしDeNAの場合は、「こんなシステムがあれば費用対効果が高い」という発想から新しくシステム開発していくシーンが多々発生します。これはつまりエンジニアにとっては、開発の機会が多い = 成長できるチャンスが多い、ということが言えます。

どのような開発、カルチャーなのかはこちらを参考にしていただくとイメージが湧きやすいと思いますので興味のある方は是非チェックしてみてください。

テクニカルオペレーショングループ

社内で利用するSaaS製品の選定、機能開発による運用改善、アカウントの管理・見直しなどを行っているグループになります。

SaaS製品なしでは業務が回らない近年、ライセンス数の増加や円安などの影響でコスト面を指摘されて頭を抱えている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。DeNAでもその影響を受けていますが、今年度のSaaS製品のコストは、前年度と比較して増加しない見込みです。

これを実現した理由として、2つの要因があります。1つは徹底的なライセンスの棚卸しに注力していることです。もう1つはベンダーとの交渉を通じて得られた成果です。

また、当グループではSaaS製品自体のコスト管理の他に、社内メンバーの工数低減にも取り組んでいます。具体的にはこれまで手動で行っていたライセンスの棚卸作業などの定常業務を自動化する仕組みの開発が挙げられます。

上記のようなライセンス管理や情報システム部門メンバーの工数低減活動は日々の業務で忙殺されて後回しにされがちですが、専任のグループを設けてしっかりと管理することで、コストや人的リソースの最適化を図ることが可能になっています。

この状態は例えば、生成AIなどの新しいITサービスが登場したときにメリットが出てきます。私の過去の経験では、新しいITサービスを自社に取り入れたいと思っても予算やリソースがない場合、導入時期を見送る結論を出したことがありました。このとき、コストの見直しやメンバーの工数低減活動をしっかり行っていたら結果は変わっていたかもしれません。

変化の早い外部環境に適応し、DeNAグループ全体のIT戦略の柔軟性と迅速性を向上させるための重要なグループとなっています。

エンプロイーエクスペリエンスグループ

社内ITのヘルプデスク機能、OA機器の調達・管理などを行っているグループになります。

近年、ヘルプデスク機能はアウトソースされるか、手の空いている社内メンバーが対応するのが主流です。しかし、DeNAでは専属の社内メンバーが対応しています。

この体制をとった結果、実績として月に平均約400〜600件程度のお問い合わせに対して満足度も99%以上の高い数値をキープしており、ユーザーにとって満足度の高いサービスを実現できているといえます。ユーザーの満足度向上の取り組みとして、下記のような事例があります。

しかし、異動の多い時期やシステム入替えの時期にはお問い合わせが増加し、ユーザーの待ち時間も増えてしまいます。その状況を解消するため、現在は内製開発した社内向けChatGPT「ChatAI」の活用に取り組んでいます。

生成AIを社内の問い合わせ対応向けに利用する場合、まずは社内のナレッジを学習させないと社内ユーザーが期待するような回答はなかなか返ってきません。そのためDeNAでは以下の取り組みを実施して「ChatAI」がヘルプデスクの裏方ロボットとして機能するよう育成を進めています。

  • 過去〜現在までの問い合わせ内容と回答を「ChatAI」に学習させる
  • 日々ヘルプデスクに寄せられた問い合わせをすべて「ChatAI」に通し、適切な回答ができるか評価する

2023年9月に運用が開始されて約1年が経った現在、「ChatAI」が役に立ったお問い合わせ数※1は上昇傾向にあり、2024年6月末時点で46%となっています。今後もこの数字を伸ばす活動を進めていく予定です。

こちらに「ChatAI」導入経緯、IT戦略部の活用事例詳細がありますので、気になる方は是非チェックしてみてください。

※1:操作質問やトラブルシュート等「ChatAI」での回答可能な範疇のお問い合わせ数

コーポレートオペレーショングループ

DeNAグループ全体の業務課題解決、プロジェクト管理や基幹業務の運用サポートをするグループになります。本グループの特徴は、子会社を含むDeNAグループ全体を巻き込んだ案件に取り組むことが多い点です。

これはどんな組織でも共通している点ですが、新しいシステムを導入するということになれば、必ずAs-IsとTo-Beの違いによるGAPが発生します。これがグループ全体に影響がある課題だった場合、計画を立てて課題解決を図り、DeNAグループにとって質の高いサービスの構築を目指すのがこのグループの役割です。

現在取り組んでいる事例として、組織や人を管理する仕組みを最適化するプロジェクトがあげられます。人事異動シーズンや組織改編が行われる時期は作業量が増える、という方が多いのではないでしょうか。その原因として代表的なものは下記のとおりです。

  • 人事異動や組織改編時の定常業務負荷が大きい
  • 人事・組織情報とシステム構成にズレがあり、全体把握に時間を要する

しかしこの問題を改善したくても課題の規模が大きく関係者が多いため、何をどのように進めたら改善されるのか不明瞭でなかなか着手できない、という方が多いかと思います。

このような問題に対して複雑化している業務とシステムを同時に見直し、会社全体のQCD向上を実現を目指しています。

システム基盤グループ

社内システムを支えるサーバーやミドルウェアなどを管理するグループです。

インフラに関しては、サーバーの構築から運用まで行ってくれるベンダーを利用している企業が多いと思いますが、当社では社内メンバーが対応しています。

インフラエンジニアが社内にいる大きなメリットは、自社インフラの安定稼働とコストの両立を達成するために着実に計画・実行する点ではないかと思います。

今年度の実績として本グループでは現在、サーバーのリソース点検・削除を実施し、年間換算で約4万ドルのコスト削減を実現しています。現在はさらなるコスト削減余地を検討するため、サーバーのリソースの利用状況をサービス別で詳細に分析するツールを内製開発しています。今後は内製ツールで可視化した結果を元にサービス別にコスト削減の施策の検討・実施をしていく予定です。

上記のような作業の効果は実際にやってみないと分からないことが多いという経験があります。そして効果がなかった場合、次の手を考える(=追加コストが増える)といった作業の繰り返しも経験してきました。

社内にインフラエンジニアがいることは事業の安定運営とコスト削減に寄与していると日々感じています。

まとめ

ここで本記事の要点をまとめますと、

  • ミッション達成のために社内メンバーが責任を持って業務に従事していること
  • その結果、明確な成果が出てユーザーにとって満足度高い社内ITが提供できている

という2点になります。

DeNAのIT戦略部の顧客は社内ユーザーです。IT戦略部の各グループメンバーがそれぞれの役割を全うすることで、ユーザーに対して安定的なITサービスを提供し続ける環境を実現しています。

最後に

今回はDeNAの社内IT事情を紹介させて頂きました。

情報システム部門の仕事は社内システムの安定稼働と並行して将来のあるべき姿を考えなければなりません。しかし通常業務に追われてまとまった時間が取れずに「将来のあるべき姿」を考える時間がなかなかとれない、と悩んだりしている人も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

僭越ながらこの記事が社内ITに関わる情報収集の一助となれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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