技術広報ってやりたいこと、やるべきことが多すぎる!!誰か手伝って!?
似たようなことを思ったことがある技術広報、もしくは技術広報的な役割を担当している人は多いのではないでしょうか?
この記事では、 技術広報 Advent Calendar 2022 の24日目の記事として、DeNA の技術広報である玉田が 技術広報がやりたいことにもっと時間を割けるようになるための情報 をご紹介します。
技術広報がやりたいこと、やるべきことは多い?
会社にもよると思いますが、多くの技術広報は以下が業務範囲になっていると思われます。
- エンジニアブログの運営、編集、保守
- エンジニア登壇のサポート
- 技術カンファレンスのスポンサー対応、企画や運営
- 技術勉強会の開催サポート
- 自社主催技術カンファレンスの企画、登壇支援、運営
- 自社主催勉強会の企画、登壇支援
- 社内、社外エンジニアへのブランディング調査
- 社内技術コミュニティのサポート
- Twitter、YouTube、connpass 等の運営
これら定常業務に加え、戦略立案や施策の検討、各種分析なども行う必要があるので、やるべきことが多すぎて、やりたいことになかなか手が回らない方も多いのではないでしょうか?
技術広報はどこに時間を割くべき?
技術広報が行うべき定常業務の中には、同じことを何度も繰り返すものが存在しています。
- 自社が外部発信において大事にしている考え方を伝える
- 記事の執筆プロセス / 登壇資料の作成プロセスを伝える
- 記事を書く人 / 登壇する人に会社として注意してほしい点を伝える
- 記事執筆 / 登壇資料作成で利用できる社内の資源を伝える
- 社内の関係部署に確認を依頼する
これらの業務はもちろん大事なのですが、こういった定常業務に忙殺される事で、よりチャレンジングな事を行うための時間がなくなってしまいがちです。
DeNA では、創業者の南場が AWS Summit の基調講演で話したように、「創造的な仕事へのフォーカス」をとても大事にしています。
技術広報としても、創造的な仕事を行うことに時間を割けるようになると嬉しいですよね?
ではどうやったら良いのか。
不明点をあらかじめ減らしておく
例えば、エンジニアが自社のエンジニアブログ記事をはじめて書く時、そのエンジニアにとっては執筆に関して不確実なことが多すぎて、1つ1つの不明点を減らしていくことに多大な労力が必要となります。
また技術広報が技術カンファレンスのスポンサーについて判断を行う時も、判断を行う上で必要な情報や判断基準など不確実なことが多すぎて、不明点を減らすことに多大な労力が必要となります。
これらに対して、判断基準を事前に決めてガイドラインとしたり、マニュアルをつくったりなど、「不明点をあらかじめ減らしておく」ことで、これらの業務への労力を軽減することができます。
具体的にどんなドキュメント化を行えるのか?
ただでさえ忙しいのに、ガイドラインやマニュアルをつくっている暇なんてない。。。
そんな声が聞こえてくる気がします。確かにその通りで、ガイドラインやマニュアルをつくるのはとても大変で、膨大な時間がかかります。実際に、私が所属する Engineering 室のみんなでガイドラインやマニュアルをつくったときは、本当に大変でした。。。でも一度つくってみると、定常業務が冗長化されたり、ドキュメントを読むだけでOKになるため、他の仕事を行える時間がかなり増えました。
この記事では、 DeNA が実際に作成したガイドラインやマニュアルの構成を紹介することで、同様のガイドラインやマニュアルをつくりたいと思っている技術広報の方々のサポートになることを目指します。
実際にドキュメント化した事例
様々なガイドラインやマニュアルがありますが、利用される頻度が高いのが 「① blog 記事の執筆」 と 「② 登壇資料の作成」 の2つです。
この2つについて、DeNA でつくったものをご紹介します。
① blog 記事の執筆について
DeNA は2010年からエンジニアブログを開始し、12年 blog を継続してきました。2018年から blog 執筆に再度力を入れ、blog のシステムをイチから開発したり、ガイドラインも整備してきており、最近では執筆者から高い評価をいただけるまでになりました。この執筆プロセスで利用するガイドラインやマニュアルを少しだけご紹介します。
執筆者がみるもの
slack で #engineers-blog チャンネルという、全エンジニアが参加するチャンネルをつくっています。新しく入社された方も、このチャンネルに入ることになります。このチャンネルで登壇者とのやりとりを行い、執筆のガイドラインへのリンクなども掲載しています。
執筆のガイドラインは以下の構成です。
- Engineer Blog とは?
- 目的
- ターゲット
- コンセプト
- 記事の品質や表現
- Must 要件(記事としてこの品質、表現は守ってほしいこと)
- Want 要件(ここまで満たせてたら嬉しいこと)
- 執筆のフロー
-
- 記事執筆の宣言
- ※ どういう記事を、いつ出したいか、を書いてもらうう
- ※ Github の Issue を起票することで宣言(Issue templateを活用)
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- 上長確認
- ※ どういう記事を書こうと思っているか、書く前に相談してもらう
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- 執筆
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- レビュー
- ※ 上長や同僚、その他広報など必要な方へ依頼してもらう
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- 公開
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- 拡散
- どういう Tweet をすると良いか
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- フォーマット
- markdown 記法
- Frontmatter
- OGP画像
- 執筆に関しての注意点
- 公開に関する許諾について
- ヘイトやハラスメントについて
- 相談・壁打ち
- よくある質問
- アンチパターン
- アイコン・ロゴライセンス 早見表
- ※ ソフトウェアのアイコンやロゴを利用する際に活用する表
- ※ アイコン、ロゴ、利用規約をまとめ、確認できるようにしている
これはぜひおすすめしたい
過去に blog 記事を書いたエンジニアの方々にアンケートをとったところ、記事の書き初めが大変であったという意見が多かったです。
DeNA では、blog 運営メンバがこちらの 「 発信内容の検討テンプレート 」 を利用して、執筆を検討しているエンジニアの方と、記事の構成やストーリーを整理する 壁打ち を行うことで、この課題感を解消しています。
「 発信内容の検討テンプレート 」 を公開しますので、よろしければぜひご利用ください。
また、記事を公開する際のもうひと工夫については 「Blog記事を読んでもらうためもうひと工夫!技術広報が出来る事」 でも紹介していますので、ぜひご利用ください。
② 登壇資料の作成について
2021年3月から2022年12月までに合計6回のオンライン自社技術カンファレンスを実施し、63登壇と Lightning Talk 15個分の登壇資料作成をサポートしてきました。この登壇資料作成プロセスについても改善を続けており、最近では執筆者から高い評価をいただけるまでになりました。このプロセスで利用するガイドラインやマニュアルを少しだけご紹介します。
登壇資料をつくるまで
登壇者が決まった後、登壇者をあつめて KickOff を行います。KickOff では以下の資料をつかっています。
- スケジュールと登壇者の対応
- XXX日前:Webサイト掲載内容の提出
- XXX日前:Webサイト公開
- XXX日前:登壇資料の提出
- XXX日前:登壇資料のレビュー
- XXX日前:登壇練習会の実施
- XXX日前:レビューや指摘事項の反映
- XXX日前:事前収録
- 開催当日:本番
- 開催翌日:登壇資料やアーカイブの公開
- Webサイト掲載内容の作成から提出まで
- 掲載項目
- ※ タイトルや概要の文字数などを予め決めています
- 掲載イメージ
- タイトルと概要の書き方
- 掲載項目
- 登壇資料の作成から提出まで
- 登壇資料の要件
- ※ GoogleSlide を活用することなど、守って欲しい要件を伝えています
- 登壇内容の注意点
- 用語の扱いについて
- 情報の扱いについて
- 構成の組み方について
- 登壇内容の壁打ち
- 登壇資料のレビュー
- 上長や同僚のレビュー
- 広報、法務などのレビュー
- 登壇資料の要件
資料をつくったあと
登壇資料をつくった後、同僚や広報、法務に資料を確認してもらい、資料の磨き上げを行います。
資料の磨き上げを自身で行ったり、登壇練習会を行う上で確認いただくために以下の資料をつかっています。
- 登壇資料の磨き上げ
- 聞き手の満足度をあげるための構成の組み方など
- 登壇資料チェックリスト
- 聞き手の満足度をあげるための構成の組み方など
- 登壇練習会
- 視聴した人から slack で実況コメント
- 視聴した人から google form でまとめてFeedBack
- 収録 / 配信当日の流れ
- 収録 / 配信スタジオについて
- 登壇者の収録環境
- 過去の事例
- どういったディスプレイがあるか
- Slide の Speaker Note をどこで確認できるか
- 登壇の流れ
- Ask the Speaker の流れ
登壇したあと
- 登壇動画、登壇資料の公開
- フィードバックについて
- 登壇満足度をNSATとして算出
- アンケートのコメントを抽出して共有
- ベストトークについて
- 満足度が高かった上位の登壇を表彰
これはぜひおすすめしたい
登壇を支援するからには、登壇を見る方々の満足度を高めたいですよね。
DeNA では「登壇を見たけど、よくわからなかった」を少しでも減らすため、 「登壇資料チェックリスト」 という資料をみて、登壇資料の構成の組み方や表現を見直せるようにしています。
「登壇資料チェックリスト」 も公開しますので、よろしければぜひご利用ください。
登壇することになった人の中には、上司からの推薦で登壇が決まったものの、本人は登壇経験がなく、登壇資料をどう作成したらよいか分からない方も多いです。
そういった方のために 「サクッとわかる!はじめての技術系登壇資料のつくりかた」 という、登壇資料の作成方法をまとめました。
また社内では、blog でも活用している 「 発信内容の検討テンプレート 」 を利用して、エンジニアの方と一緒に登壇資料の構成やストーリーを整理するといったサポートも行っています。こちらもぜひご活用ください。
まとめ
この blog 記事で紹介したもの以外でも、技術広報がやるべきことは多々あり、その1つ1つについてガイドライン化やマニュアル化を進めています。
技術広報としてやることがたくさんある中で、追加でガイドラインやマニュアルをつくること自体はとても大変なんですが、いったん作ると本当にやれることが増えますし、プロセスの改善も容易になります。(それぞれ振り返りを行った後に、ドキュメントを修正することで、業務プロセスが改善されていきます。)
またガイドラインやマニュアルがあれば、いろんな人に協力をお願いできて、冗長化も可能です。実際に、ガイドラインやマニュアルは私が所属する Engineering 室のメンバーと一緒に作成し、技術広報ではないメンバーにも定常業務を手伝ってもらえています。エンジニアから技術広報になった方は、ぜひ自動化にも挑戦してみてください。
世の中の技術広報の人々の定常業務にかける時間が減り、さまざまな挑戦が行われ、それぞれの会社に所属するエンジニアの方々の発信がより良くなり、結果的に技術コミュニティに還元されたら素敵ですよね!
今後も技術広報として工夫したことを公開していけたらと思っていますので、よかったら DeNA 公式 Twitter アカウント @DeNAxTech のフォローをぜひお願いします!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
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