はじめに
こんにちは。IT 基盤部でインフラエンジニアをしている小池です。 IT 基盤部は DeNA 全グループで使われているシステム基盤を横断して管理しているインフラ部門です。
インフラエンジニアといえば、一般に
- 業務時間が長い
- 深夜の対応が多い
- 土日祝日の対応が多い
と思われており、「きつい」職種だと言われることが多いです。
実際に、「インフラエンジニアに興味はあるのですが、きついですよね………?」と、上記の勤務実態に関する質問を受けることがかなりあります。 私はその都度、「そんなことないよー」「きつくないよー」と答えていましたが、私の感想を述べても何の説得力もなく、「伝わってないなー」と感じていました…。
また IT 基盤部では、勤務中に どの事業の
どんな作業に
何分かけたか
を記録しています 1。
これらのデータを分析することで、上記の質問への回答の説得力があがるはずだと考えました。
そこで今回の記事では、2021 年 4 月 1 日から 6 月 30 日 (以下、分析期間とする)の IT 基盤部メンバーの上記勤務データを
- 平日の始業時間と終業時間
- 平日の平均業務時間
- 平日深夜の業務状況
- 土日祝日の業務状況
という観点で分析し、DeNA のインフラエンジニアの勤務実態を可視化してみようと思います!
始業時間と終業時間
分析結果
分析期間平均 [JST] | 分析期間の中央値 [JST] | 分析期間の標準偏差 [時間] | |
---|---|---|---|
始業時間 | 10:54 | 11:00 | 1.58 |
終業時間 | 22:46 | 22:36 | 2.65 |
(補足)
- 始業(終業)時間の定義: その営業日の一番最初(最後)に勤怠を入力した時間
- 分析期間平均/中央値/標準偏差: 分析期間の日ごとの全メンバー分のデータを統計処理したもの
- ヒストグラムの 1 データ: ある IT 基盤部メンバーの、分析期間内のある一営業日の始業 (終業) 時間
考察
始業時間
- 平均始業時間は 10:54 であり、標準偏差は 1.58 時間。つまり、9:30 〜 12:30 の間に約 7 割のメンバーがそろうということ
- IT 基盤部の勤怠ルールで
基本的に 12:30 までに勤務を開始する
と決められているので、このルールがあらわれている
- IT 基盤部の勤怠ルールで
- ヒストグラムを見ると、10:00 付近、11:00 付近、12:30 付近にピークがある
- IT 基盤部は、
それぞれのライフスタイルに合わせた働き方が認められている
ということがあらわれている
- IT 基盤部は、
- 12:30 以降(勤怠ルール外)に勤務開始しているデータもある
- IT 基盤部では、
インフラエンジニアの勤務実態に合わせたとても柔軟なルールになっている
- 例えば、12:30 を過ぎて勤務を開始する場合は google カレンダーにその旨を記載するだけで ok という運用になっているなど。そのため、深夜にアラート対応をした翌日は勤務開始を遅らせるといった対応が柔軟に可能。
- IT 基盤部では、
終業時間
- 平均終業時間は 22:46 であり、標準偏差は 2.65 時間。ヒストグラムのピークが複数あり、なだらかな正規分布になっている。
- 午前中から就業して夕食前には終業しているメンバーもいますが,夜型のメンバーが自然と多くなっている傾向が見られる
- これも
それぞれのライフスタイルに合わせた働き方が認められている
ということ
- これも
- 午前中から就業して夕食前には終業しているメンバーもいますが,夜型のメンバーが自然と多くなっている傾向が見られる
- 日付が変わった、24:00 以降に終業しているデータもある
- 「一旦終業したが、その後深夜のアラート対応により、最終的な終業時間が深夜になった」という事象が含まれていることが考えられる。その場合は、休憩時間が含まれているため、1日の業務時間としては長くなっていない(次の業務時間の節を参照)
平日の平均業務時間
分析結果
メンバー間平均 | メンバー間中央値 | メンバー間標準偏差 | |
---|---|---|---|
平日の平均業務時間 | 10 時間 21 分 | 10 時間 23 分 | 1.24 時間 |
(モバゲー担当部門のみ) | 10 時間 58 分 | 10 時間 43 分 | 1.38 時間 |
(モバゲー担当部門以外) | 10 時間 2 分 | 10 時間 9 分 | 1.07 時間 |
(補足)
- 業務時間の定義:
終業時間
-始業時間
-休憩として申告された時間
- 平日の平均業務時間の定義: ある IT 基盤部メンバーの、分析期間中の平日の業務時間を平均したもの
- メンバー間の平均/中央値/標準偏差: 全メンバー分の平日の平均業務時間のを統計処理したもの
- ヒストグラムの 1 データ: 平日の平均業務時間
考察
- モバゲー担当部門のみの平日の平均業務時間は 10 時間 58 分であった
- 分析期間はモバゲーのクラウド移行 2 の終盤であり、繁忙期であった。そのため、モバゲーのクラウド移行の担当メンバーの業務時間がかさんだことで、平均業務時間が上振れたと考えられる
- 平均業務時間の上位 4 人は、モバゲー担当部門のメンバーであった
- モバゲー担当部門以外の平日の平均業務時間は 10 時間 2 分であった
- これらの部門では繁忙期ではなかったので、こちらのデータの方が実態に即している
- DeNA の裁量労働制では 1 日あたり 9 時間 30 分 ( 7 時間 45 分の業務時間 + 1 時間 45 分のみなし残業) 分働いたとみなされる。よって、今回分析した平日の平均業務時間は、このみなし業務時間のおよそ + 30 分ということになる。
- IT 基盤部は、業務時間でタスク量にコミットする方々も多い印象なので、個人的にはこの平均業務時間のデータに違和感はない
- もちろん、長い業務時間を強制されることはなく、メンバー各々で業務時間をコントロールすることを求められる。ヒストグラムを見ると、平均業務時間が 9 時間 30 分を下回るメンバーも半数弱いることからも、長い業務時間を強制されることはないことが示されている
平日深夜の平均業務時間
分析結果
メンバー間平均 | メンバー間中央値 | メンバー間標準偏差 | |
---|---|---|---|
平日深夜の平均業務時間 [分] | 40 | 22 | 45 |
分析期間中の平日深夜の対応率 | 30.17% | 28.45% | 23.10% |
(補足)
- 深夜の定義: JST 22:00 から翌 4:59 3
- 平日深夜の平均業務時間の定義:
ある IT 基盤部メンバーの分析期間中の平日深夜の総業務時間
/そのメンバーの分析期間中の総業務日数
- 平日深夜の対応率の定義:
ある IT 基盤部メンバーの分析期間中の平日深夜の業務日数
/そのメンバーの分析期間中の総業務日数
- ヒストグラムの 1 データの定義: 平日深夜の平均業務時間, 平日深夜の対応率
考察
- 平日深夜の平均業務時間の中央値は 22 分。つまり半数のメンバーの平日深夜の平均業務時間は 22 分以下である
- IT 基盤部ではインフラ管理・アラート対応の自動化が進んでいるため、深夜に人間が対応しないといけないケースが減っている
- 深夜に対応しないといけないアラートを受ける当番を、担当チーム内でローテーションしているため、特定メンバーに深夜対応が偏るということはない
- 平日深夜の対応率の平均値・中央値ともに約 30 %
- 前述の勤怠ルールの下限 12:30 に始業し、規定勤務時間 (7 時間 45 分) + 休憩時間 (45 分) 分勤務したとすると、終業時間は 22:00 となる。つまり、1 分でも残業したり休憩時間を延長したりすると、深夜時間に入ってしまう。これにより深夜対応率が高くなったと考えられる
- 平日深夜の平均業務時間が 120 分を超えているメンバーもいる
- 散布図から、平日深夜の平均業務時間と深夜稼働の割合は比例関係にあると読み取れる。つまり、日常的に深夜に働いているメンバーほど深夜業務時間が長いということである。
- 日常的に深夜に働いているメンバーがいるということは、前述した IT 基盤部では
それぞれのライフスタイルに合わせた働き方が認められている
ということを示している。
土日祝日の平均業務時間
分析結果
メンバー間平均 | メンバー間中央値 | メンバー間標準偏差 | |
---|---|---|---|
土日祝日の平均業務時間 [分] | 25 | 7 | 43 |
分析期間中の土日祝日の対応率 | 9.17% | 3.33% | 10.91% |
(補足)
- 分析期間中の土日祝日: 土日は 26 日、祝日は 4 / 29, 5 / 3 ~ 5 の 4 日、計 30 日
- 土日祝日の平均業務時間の定義:
ある IT 基盤部メンバーの分析期間中の土日祝日の総業務時間
/分析期間中の土日祝日 (30 日)
- 分析期間中の土日祝日の対応率の定義:
ある IT 基盤部メンバーの分析期間中の土日祝日の業務日数
/分析期間中の土日祝日 (30 日)
- ヒストグラムの 1 データの定義: 土日祝日の平均業務時間、土日祝日の対応率
考察
- およそ半数のメンバーは、土日祝日の平均業務時間が 10 分以下であり、土日祝日対応率も 10 % 以下である
- 深夜対応と同様に、自動化が進んでいること・当番のローテーション等の施策によるものだと考えられる
おわりに
以上、分析した結果をまとめると、IT 基盤部の勤務実態は
- 始業時間・終業時間は柔軟に決められる
- 平日の業務時間はやや長め
- 深夜対応・休日対応はあるが、頻度は少なく、業務時間も短い
のようになります。また、これらによる負荷を軽減するために
- 勤怠ルールが柔軟
- アラート対応の自動化・適切に分担
- 今回分析できたように、業務状況や工数の可視化ツールがある
のような制度・仕組みが整っているため ( DeNA の ) インフラエンジニアは 「きつい」職種ではなく、むしろ働きやすい環境が整っていると思っています!
今回の記事で、インフラエンジニアも「意外ときつくないんだなぁー」と感じていただけるとうれしいです!
この記事を読んで「面白かった」「学びがあった」と思っていただけた方、よろしければ Twitter や facebook、はてなブックマークにてコメントをお願いします!
また DeNA 公式 Twitter アカウント @DeNAxTech では、 Blog記事だけでなく色々な勉強会での登壇資料も発信してます。ぜひフォローして下さい!
-
極力記録の手間がかからないように、
simple task recorder (str)
という CLI ツールを内製して利用。ターミナルから$ str mobage alert
のようにコマンドを打つと、打った時間とその内容 (先の例だと、モバゲーのアラート対応) が記録されていく仕組み。 ↩︎ -
DeNA TechCon 2021: MobageのオンプレミスからAWSへの移行 や DeNA Tech Blog: モバゲーをオンプレからクラウドに移行した裏側 ↩︎
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
この記事をシェアしていただける方はこちらからお願いします。